短編集。(JUMP×JUMP)

2 ページ2

「……知 念は、ほんとに、俺でいいの？」


ふたりで向かい合って布団に入ったら、いのちゃんはぽつりとそう言った。

このやりとりも数回目。

何回もやってれば、慣れてくるもので。


「おっけーいって答えた方がいいの？」


今回はそう言って茶化してみた。


「……茶化さないでよ」


そしたら、いのちゃんはちょこっとだけ不機嫌そうになる。

いのちゃんの持ちネタなのに。


ボクはごめんね、と笑って、手を伸ばした。

そーっとほっぺたに触れたら、いのちゃんはくすぐったそうにまつ毛を震わせた。


「いのちゃんでいいんじゃなくて、いのちゃんがいいんだよ」

「……ほんとに？」

「信じられない？」

「……」



無言のまま、いのちゃんはこく、と頷く。

仕方ないなぁ。


すぐ不安になっちゃういのちゃん。

どうしたら、ボクの大好きって気持ちは伝わるの？


「ボクね、いのちゃんの髪の毛が好き」
「え、」


急に切り出したら、いのちゃんは驚いた顔をした。


「サラサラの黒髪のときも好きだったけど、いまのふわふわしてる髪の毛も大好きだよ。
茶髪も似合うよね。かわいい」

「……知 念……？」


髪の毛に触れたら、いのちゃんの顔がじわじわ赤くなっていく。

何言ってるの、っていうみたいにボクの名前を呼んで。

ふふ。効いてる効いてる。


ボクは、それからね、と笑う。


「おっきな目も好きだよ。
普段とろーんとしてるのも、笑ったときにくしゃってなるのも、食べ物もらってきらきらしてるときも。
いのちゃんのことぜーんぶわかっちゃう目が好き」

「……」



あー。ついに黙っちゃった。
でも、やめてなんかあげない。


にや、と笑ったボクを見て、嫌な予感がしたらしいいのちゃんはぱっと耳を抑えてしまう。


そんなことしても、無駄だよ？


とっておきの秘策があるんだから。

3→←喧嘩したあとは不安になる伊野尾くんとひたすら甘い知 念くんの話。(cnin)1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す