俺の心を返して (ページ2)

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「グクオッパ、ビールっておいしい？」

　ガヤガヤと、大人数の若者が集まった店内はありとあらゆる雑音で騒がしい。去年よりも新入生歓迎会を兼ねたこの飲み会は盛況で、華やかな雰囲気の新入生の子が大勢集まってくれた。

「普通に」
「普通にってどんなですか？私飲んだことない」

　多分、それはある人が集客のいいカモになったのだろう。

　毎年サークルの二年生が主催をする場だから、去年の私たちよりもずっと忙しいに違いない。

「頼んでみれば？飲み放題だし」
「でも、飲めなかったらヤじゃないですかあ」

　会場を見渡すと、あちこちで二年生が注文を確認して回ったり、新入生の様子を見て回ったりと忙しそうにしている。

　去年は今の新入生の子たちと同じように、緊張して強張った顔をしたり、居心地悪そうに小さくなっていたのが嘘のようだ。立派に成長してくれて、ヌナは嬉しい限り。ほろりと涙が零れそうになる。

　立派になったなあ、みんな。

「そしたら適当に誰か飲むよ」
「えー。でもわたし、ちょっとでいいんです。一口くらい」

　立派に……。

「A、百面相してんの？」

　ひょいと顔を覗き込んできたテヒョン先輩に、私はぐっと眉を寄せた。

「してませんけど？」

　ついでに、ぐびっとジョッキを呷る。

「飲むペース早くない？」
「別に」
「機嫌悪いなあ」

　無下に扱うのに、テヒョン先輩は気分を害した様子もなく、隣から動く様子はない。いつものことなので、特に気にはしない。

　でも。

　視界の端にちらちらと映り込む二人。ついでに耳が拾う会話に、どうにも飲み会に集中できない。

　いかにもやる気のなさそうなグクの隣にぴったりと張り付き、しなだれかかり、かわいく甘える女の子。

　もやもや。むずむず。

　言葉にできない不快感。

　せっかくの飲み会なのに、年上として盛り上げなきゃいけない場なのに、どうにも心に靄がかかって仕方ない。

「ビール、おかわり！」
「やめといた方がいいんじゃない？」

　隣で冷静に言うテヒョン先輩の太腿をぎゅっと抓る。

「いてっ！」

　恨めしそうにこちらを見る先輩を無視して、私はジョッキに残った最後の一口を飲み干した。