第9話 ページ10
しばらくして病室へ戻ると、シュウジさんが残していったメモが置いてあった。
″悪かった。また見舞いに来る。次は高級メロンを持参予定だ″
もうフルーツは有り余ってるから充分なのだけど…。シュウジさんの謎のプレゼント予告にふふっと笑みが溢れた。
失礼な態度とっちゃったし、次会った時はちゃんと謝らなきゃ。
それから二日後のお昼下がり。あの男の子が話を聞いてくれたお陰で心の整理がつけられた私は、もう一度彼に会うために中庭を訪れていた。
サッカーを遊んでいる小学校低学年くらいの数人の子供たちはいるけど、その中に彼はいるわけもなく。
まぁ会う予定してる訳じゃないし、もしかしたら退院してるかもしれないしな〜…。名前聞いておけばよかった。
少し残念に思いながら広い中庭をぐるぐると歩いてると、近くに生えてるよく手入れのされているトピアリーがガサリ、と揺れた気がした。
？なんだろう。
恐る恐る近づいていくと、トピアリーの後ろから物凄い速さで「わっ！」という掛け声と共に人が目の前に飛び出てきた。
『ひゃぁぁぁっ！？何！？』
「あはっ、引っかかった」
大成功！と言って目の前にいたのは私が会いたかった昨日の男の子だった。驚かされた私の心臓はドキドキして胸苦しい。手を胸元に添えて、ふーっと深呼吸をする。
『もー！びっくりした…』
「ごめんごめん、ちょっと驚かせたくなっちゃって」
てへ、と言ってベンチの方に走っていった彼はこっちおいでよ、と手招きをした。
ベンチに腰を下ろした彼と同様に、隣に腰掛けた。
「あれから落ち着いた？」
『うん、一昨日はありがとう…お陰様で整理できた。私、天羽A。よろしくね』
「それならよかった。僕は雨宮太陽。よろしく。太陽って呼んで。Aって呼んでもいい？」
『うん』
少し照れくさくなりながらも、握手をした。同い年の男の子と話し慣れてないから、ちょっとだけ緊張する。
そういえば一昨日は、サッカーボール持ってたっけ。私はあまりサッカーに詳しくないけど、好きなのかな。
『その太陽、は…サッカーやってるの？一昨日、サッカーボール持ってたよね』
「あぁ、やってるよ。でも体が丈夫じゃないからたくさんはできないんだ。もしかしてAも？」
『そうなんだ…。ううん、私はサッカーやってないから詳しくないんだ。よかったら色々教えて？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アスター | 作成日時：2022年8月8日 17時
