第11話 ページ12
「見舞いだ。約束通り高級メロンを持ってきたぞ」
『約束してませんし前にもらったフルーツが残ってるので十分です。でもありがとうございます』
翌日。予告通りにメロンを持ってきたシュウジさんは何故かドヤ顔で病室に現れた。
病院の厨房とか借りないとでかいメロンを切り分けることができないのだけど…。メロンが入った重い箱を手渡されて、嬉しいのか面倒臭いのか、少し複雑な気持ちになった。箱はテーブルの上にとりあえず置いておいた。
「足の具合はどうだ?」
『大分良くなりました!あの、この間はすみませんでした。落ち着きました。両親にいつか会える方法、ないかもしれませんが…探してみたいと思います。何年かかっても、一言でもいいから感謝の気持ちを伝えたいんです』
「そうか、私もできることがあれば協力しよう。会えるといいな」
『はい…ありがとうございます』
シュウジさんは初対面が赤スーツホストの風貌だったから変わってる人なのかなとか思ってたけど、こうやって労ってくれて面倒見てくれるし、気遣いができる良い人だから信頼できる。人は見かけによらないものだと思った。
ところで話は変わるが、と切り出したシュウジさんの声に姿勢を正して耳を傾ける。少し真剣な顔になったシュウジさんを見て、思わず固唾を飲み込んだ。
「お前にはフィフスセクターの訓練中の選手として、サッカーをしてもらう。ゴッドエデンに行ってもらいたい」
『え?』
(そもそもサッカーやったことないんだけど!!!)
フィフスセクター……?ゴッドエデン?知らない単語に戸惑いを隠せない。サッカーは学校の体育の時間でしかやったことがない。
「退院したら天羽にはゴッドエデン、というシード育成施設…わかりやすく言うとサッカー選手訓練施設だな。そこで訓練してもらいたい」
『ほ、ほう…私、サッカーやったことないんですが大丈夫ですか…?』
「無論、そこで鍛錬を積んだ者は強くなるから安心しろ。訓練が終わったらサッカー選手として給料も発生するぞ。天羽の身の補償を準備する時間が必要でな。寮生活をして力をつけて、身を守る術を持って欲しいんだ。得た技術は、今後の天羽の力に必ずなる。どうだ、やってみないか」
給料…?まだ説明不足でイマイチぴんと来ていない。
でも……サッカーに興味が湧いていた所だし、シュウジさんにお世話になってる私に何かできることがあるならば。挑戦する以外の道はないと思ったので迷いはなかった。
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作者名:アスター | 作成日時:2022年8月8日 17時