金曜日に会いましょう【赤】【桃】 (ページ3)

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『しげ、』

重「あ、風呂上がった？
おかえり」

『ただいま
テレビもつけないでどうした？』

重「んーーー？こっち。きて？」

隣をポンポンとたたき、隣に座らせる。

『どうした？なんか嫌なことでもあった？』

こてんと首を傾げる彼女。

…かわいすぎるって。

重「俺らがさ、初めて出会った日のこと思い出しててん」

Aが風呂から上がるまでの待ち時間。

ただなんとなくAと出会った日のことを思い返していた。

俗に言う一目惚れ。

強引過ぎたなって思うけど
それでも繋ぎ止めたい縁だった。

『……あ〜〜！はははっ、
出会い方が運命すぎて私もたまに思い出しちゃうんだよね」

わかるなあ
と小声で呟きながら顔を緩ませる。

重「あん時はナンパ扱いしてたくせにぃ？
俺のこと知らんかったくせにぃ？」

彼女の口からするりと出た"運命" なんて言葉に
まんまと心が躍ってしまったから、

この感情を悟られないようにとぼけて返す。
　

『うーわ、意地悪。友達の布教のおかげで少しは知ってたし、曲も聴かせてもらったもん』

ああ、そうやった。

"___そうだ私、重岡さんの作る曲のおかげで
やっと初恋の人を忘れることが出来たんです。"

あの日の帰り道
沈黙を破るための、Aに持ち上げられた話題が
ふと頭によぎる。

重「あの初恋の人は？」

『…？』

重「たまに思い出したりするんちゃう？
…それこそ運命やな、とか」