刀剣乱舞 -私はブラック審神者らしい- (二)

78 (からだの方の怪我より) ページ28

触れている指先が暖かい。

(確かに、霊力がすごい楽に出る感じがする)

｢恐らく…五虎退が人の形を取り戻したのも、主様の霊力の影響を、一番受け易い刀種であったからだと考えられまする｣
｢なる、刀の大きさと、必要な資材とか霊力は比例するのね」

よし、やるぞ。

｢ふう…｣

二振り目も、無事に手入れ出来ますように！




＿＿＿＿…





手伝い札の効力は劇的で、あたしの二本の手が、四本かはたまた六本に増えた感覚だった。あたしひとりが頑張っておりゃああ！って数人分の霊力を爆発させるってよりは、五虎退さんの時みたいな安定した霊力を、あたし×数人分の分身から与えることが出来てるって感じだった。すごい。これつくったのだれ。

でも、

｢…はあっ、はあ、…はあ、ちょっと休憩、｣
｢冷たいお飲み物をすぐにお持ち致します！｣
｢はあ、…っはあ、ありがとうこんのすけさん、｣

でもそのスペシャル札があっても、一期一振さんの手入れは結果休憩を挟みながらも第三ラウンドまで突入した。一度目で人の形を取り戻すことは出来たけど、二度目の精一杯の霊力注入にも関わらず、彼の傷はなかなか治らなかった。た、太刀、…大変なんだな、

長椅子に座り込みながら一期一振さんの横顔をみた。きれいな顔に幾つも残った一生残りそうな深い傷。真っ赤に染まった手袋は、間近で見ると、擦れたようにところどころが破けていて、どれだけ強く刀を握りしめてきたんだろうと思った。
五虎退さんみたいに、この傷もぜったいに治したい。そう思いながら、でもきっと、

(彼の場合、)

あたしが今治してる、からだの方の怪我より、心の傷の方が…きっと大きいに決まってる。

｢…、｣

兄弟殺しを命じるなんて、信じられない。

…彼らが目覚めたら、あたしのことや、今後のことを一体どう説明したら良いだろう。治ったとしても、三日月様みたいにすんなり信じたり、受け入れたりしてくれるだなんて到底思えないし、

｢！あ、ありがとう｣

ぐるぐると膝を抱えて考えてたあたしの傍に、こんのすけさんが、部屋の隅の水場から水を器用に柄杓に汲んで、取っ手部分を咥えて持ってきてくれた。

｢…っふう、よし！｣
｢…はい！｣

膝をぱん！と叩いて立ち上がって、あたしは再び、横たわったイケメンお兄さんの前に立った。

(心配してても仕方ない、とにかく治してからだ)

胸が二倍くらいに膨らむほどおっきい深呼吸をして、あたしは再び手をかざした。

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