刀剣乱舞 -私はブラック審神者らしい- (二)

76 ｢天使？？？？？｣ ページ26

…




ふわ、っと手の光と五虎退さん達を包んでいた光が消えた瞬間、おわった、と、言われる前に確信したのと同時に、巨大な疲れと目眩があたしを襲った。

どさっと下半身から崩れ落ちて、台にしがみつく。
不意についた腕を台の端に激しくこすって鈍い痛みが走った。

｢！っは、っはあ…はあ…！｣
｢大丈夫ですか！？｣
｢はあ、っ…はあっ、うん、…、だい、じょうぶ、っそれより｣

やばい力抜けた。気付けばびっしょりとかいていた汗と、頬にべったりとはりついた髪。それを指で取り払いながら、台に額をくっ付けてしばらく呼吸を整る。
どこか大丈夫なんだと言わんばかりに、あたしの真ん前に駆け寄ってきたこんのすけさんが、あんまりにも心配そうな顔をしてたから、咄嗟に何とか微笑んだ。

｢こんのすけさん…五虎退さん、これで、｣
｢…！は、はい！じきに、目も覚ますでしょう｣
｢そっか、…はあ、…そっか、良かった…、｣

何十分やってたんだろう。こんのすけさんの背後に横たわった五虎退さんは、最初見た時とは打って変わって、今やほんとうにきれいな白い男の子の姿になっていた。


｢…｣


一息ついてから無傷の五虎退さんを見て改めて絶句する。
まっ、………なにこの子、…天使？？？？？

白いまつ毛に縁取られた瞼や、腕や足は、手入れ中、あたしのかざした手の先で、しゃらしゃら、とどこからか聞こえてくるきれいで高い音と一緒に、柔らかい光が張り付くように元のすがたを取り戻した。手入れ中に背後を見ると、あの資材が光に変わっていた。

服も、まるで新品みたいだ。刀身も元通り。虎達の怪我も、無くなった。
信じられないけど、あたし、ほんとに治せたんだ。ほんとに…、なおせた、





(ああ、)


｢よかった、…｣


よかった。ほんとによかった。何とか治せた。あんなにボロボロで、死にかけてた子を。
目の前にある五虎退さんのちいさくて細い手の先に、きちんと薄もも色の爪がはえそろってるのが見えて、あまりの安堵に、別の意味でクラクラした。





｢ふー…｣

息をついて立ち上がる。立ち上がった瞬間、視界がぐら、と揺れかけて何度もまばたきする。
でもずっと休んでるわけにはいかない。お兄さんも治さなきゃ。完治した五虎退さんの姿を見ると、俄然使命感がふつふつと湧いてくる。

だって、この子はあの血だらけの姿で、刀になる直前、お兄さんの名前を確かに呼んでた。たしか、いちにい、って。それって、…絶対一期一振さんのことだよね、

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