刀剣乱舞 -私はブラック審神者らしい- (二)

59 ｢殺されるぞ｣ ページ9

｢回復しました！！｣


鶴の声ならぬ狐の声であたしをはっとさせたのは、パソコンをもう元に戻したらしいこんのすけさんだ。

｢えっ、もう？……って、あれ？｣

出来る管狐！！と感嘆する間もなく異変に気付く。

振り返った先のパソコン、その前にちょこんと座るこんのすけさん。問題は、…その直ったパソコンだ。


｢…時の政府からの、連絡だな｣


三日月様が、慌てて画面に駆け寄ったあたしに背後から声をかける。そう、電話が鳴っていた。

いや、多分政府は、あたしが三日月様と話している間にもきっと、ずっと、かけてきてたんだ。
直った事でやっと、コールの電波がこっちにまで届いたんだろう。緊張する心臓を抑えながら、切れてしまう前に、速攻で通話ボタンを押した。刹那、


｢御無事ですか！！！！！！！｣
｢！わ、｣

バタバタッ！！と駆け込むように発せられた声はあの役人さんのものだった。｢！あっはいっ無事です！｣と答えるあたしの声と同じ音量で、向こうから慌ただしい音が沢山する。大量の人の声と、機械の音だ。


｢送信者、無事です！｣｢信号は！！｣
｢正しく受信しています！！｣
｢三日月は？！｣｢こんのすけの無事も確かめろ！｣
｢穢れのレベルに些か変化が…！｣
｢信号解析！三日月宗近もすぐ傍に感知！｣


｢！？三日月宗近と一緒なのですか！！？｣


背後で色んな音がするけど、一番近い役人さんが驚いた声は、鮮明に聞き取れた。

｢は、はい、…！後ろにいます｣

あたしの返事に役人さんが息を呑む。

｢そんな、…！極めて危険です！！その刀剣男士は審神者の貴方に斬りかかったのです！！無事の保証は｣
｢あ、あの、｣
｢もしや、脅されていますか！？｣
｢い、いや、違います！それは絶対違います！｣

マシンガンのように投げられる言葉に即座に答えられない。でも、｢せめて何とか貴方の無事を、｣と役人さんが言い終わる前に、ガタッという乱暴な音と、ザザッと一瞬走ったノイズ音のあとで、その声が


｢異世界から来た娘だな？｣


知らないおじさんの声に変わった。

え、役人さん、電話奪われた。
そうわかった途端、嫌な予感がした。


｢そうだな？｣


さっきまでの役人さんと全然違う、冷たい声だ。ひやり、と謎の寒気が背中を伝う。


｢そう、ですけど、｣
｢上層部だ。三日月は、そこにいるのか？｣
｢は、はい｣
｢折らなければ殺されるぞ｣


あたしが息をつく間もなく投下される知らないおじさんの冷酷な言葉に思わず絶句した。

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