刀剣乱舞 -私はブラック審神者らしい- (二)

95 (ゴ…っ…) ページ45

厨の掃除はもはや、一言で言うなら戦闘と呼んで良かった。まじで、ここまで掃除頑張ったの初だし、ここまで掃除を頑張らせた場所に出会ったのも初だった。


｢ひいゃああああ！！！｣
｢主様！！頭上に！！ヤツが！！！｣
｢無理いいい！！｣


名前を言うのすらおぞましいあの…アイツも……す、数年ぶりに見てしまった、しかも一匹だけじゃない、何匹もだ…。ぎゃあ！！だの、ひいぇぁあ！！だの、声にならない悲鳴を上げ厨クリーンバトルを繰り広げたあたしとこんちゃんは、綺麗になった頃には10数年歳とったかな？？ぐらいげっそりしていた。


｢はあ…はあ……どうよ…！｣
｢お、お疲れ様でございます……｣


何がどうよだとツッコまれそうだけどそうでも言ってないとこの達成感は実感出来なかった。疲れた、へっとへとだわ…。箒を握りしめ直角定規みたいに腰を折って、ぜえぜえと息を吐く。

こんちゃんがご飯を貰えなかったって言ってたのがほんとなら、この場所はもうほぼほぼ最初から使われずに、本丸の汚れも穢れも溜めに溜めたきっとケガレ集中スポットだったに違いない。

この本丸の部屋全部がこのレベルで汚れてたらあたし流石に降参しちゃう、もうゴ…っ…は見たくない。


｢ダメだ。ごめんこんちゃん、あたし料理する気力もう無いわ……｣


ぐでっと、調理場の机に倒れかかる。ちょこんと机の上に乗ったこんちゃんは｢構いませぬ！｣と即答してくれた。うっ、不甲斐なし…！

本丸の台所は、日本家屋ならではの棚だったり(食器もいっぱいあった)、作業場なのか四畳半くらいのスペースがあったりしたけど、コンロは見たところガスみたいだったし、審神者部屋のシャワーに続いて、綺麗になってみればすごい便利な設備っぷりだった。


(前の人は、…何が不満だったんだろう…)


考えたところで分からないけど、そう思わずにはいられない。こんなに凄い力を持って、こんなにすごい場所で、すごい神様たちと、一緒に暮らしてて。



(一体何が、)




｢主様、是非今度、万事屋へ行ってみましょう。部屋にある材料だけでは、ご希望の品も作り辛かろうと思われまする。ここもこれだけ綺麗になれば、料理のしがいも材料揃ってこそにございます！｣
｢はは、言われてみればほんとだ。材料無きゃ好きなものも作れないね｣


ぼうっとしてたらこんちゃんが声をかけてくれた。今日のところはまあ、ノルマもクリアしたろう！と、次の機会に思いを馳せながら、あたし達はそこを後にした。

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