80 「主様」 ページ30
彼らを無事、完璧に治せたんだ。気付かぬうちにびっしょり吹き出てた汗を見て、それでも、気持ち悪さとか疲れよりも、圧倒的に達成感に満たされる。
「良かったあ…」
そう言って俯いた。目をつむると、一気に疲労感に襲われて、すぐ向こうに眠気が見えたからあわてて目を開いた。隣に三日月様がゆっくり腰を下ろすのが分かった。
まだ全部終わったわけじゃないよな。三日月様の腕もしっかり完治させないといけないし、この二人をちゃんと部屋まで運ばないと。疲れをごまかすためにまた水を飲む。
ごくごくと仕事のピークを越して飲み干すお水は、こんな美味しい飲み物初めて飲んだと真剣に思うぐらい美味しかった。飲み切ってぷはあとあたしが息を吐いたとき、
「………………このこんのすけ、心から、感服しております」
「…へ?」
顔を上げると、こんのすけさんと目が合った。隣の三日月様にも目を移したら、彼もあたしを見つめて、微笑みながら頷いてくれた。それが、ふたりともあたしのことを、褒めてくれているんだと分かって、ぶわ、と顔が一気に熱く、照れ臭くなってうつむきかけた。
でもあたしより先にゆっくりと、こんのすけさんのふわふわの頭が下がる。
「ここまで、…ここまで、動揺と、御自身の身に起こった混乱を省みずに…貴方様は、誠に、ご立派でございます」
「い、…!いや、そんな褒めないで…!あんなの見ちゃったら、だ、誰でも治すよ、」
「いいえ」
「、」
「……そうは思いませぬ」
そう言って、こんのすけさんが上げた顔には、こころなしか、濡れてきらめく丸い瞳があった。
あたしの咄嗟にとった行動が、あたしや彼等をここまで連れて来ることになったけど、もしも、あたしじゃない別の人だったら、違うことになってたんだろうか。
………例えば、この兄弟が治らずに、折れてしまうような結末が、
ふ、と前の奴の存在が過ぎって、すぐに振り払った。
(そんなの、考えたくない。……それに、)
「あたしが、こうやって出来るのは、こんのすけさんや三日月様のおかげでもあるよ」
「…」
「こんのすけさんが言ってくれたこと、そっくりそのまま返せるもん」
そう言って微笑んだら、こんのすけさんが、ぎゅっと口をつぐんで、しばらく何かを考えこむように黙ったあとで、ゆっくりとこう言った。
「_____主様」
「…え、」
こんのすけさんがあたしを見て言ったその言葉に、それまで吸い込んでいた息を止めた。
1323人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鳥(プロフ) - 読者様 一つ一つにお返し出来ずすみません!コメントありがとうございます!(三)についてですが、推敲が終わったところから随時公開しております!またお時間空いたり思い出して頂けた時に読んでもらえたら嬉しいです。遅筆ですが楽しんで書いております (7月7日 10時) (レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - 初めまして!一気に見させていただきました。とても面白いです!そして続きが気になります。パスワードおしえていただけないでしょうか? (6月18日 13時) (レス) @page50 id: 673a00a1b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ@前垢消えた(プロフ) - 続き楽しみにしてます!!!!! (4月28日 13時) (レス) @page50 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
テオ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ここまで読ませていただき本当に面白いと感じました。表現の仕方がとても好きでストーリーも最高です。推敲が終わるのをとても楽しみにしています。無理のない程度で頑張ってください💪 (2023年4月27日 14時) (レス) id: 85b09c3093 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 始めまして!クロです凄く面白くて続きが気になるのでパスワード教えてくださいm(._.)m (2023年3月30日 1時) (レス) @page50 id: 16daf975b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鳥 | 作成日時:2020年2月24日 20時