62 「死んでも良いんだな」 ページ12
電話の向こうから、激しく何かを叩き付けるような音が聞こえた。それがおじさんが机を殴った音だと想像するのは全然難しく無かったし、むしろ怒ることは分かってた。
「戻りたくないのか?」
問い掛けられた言葉に何も返せない、いや、返さなかった。あたしの中には凄く固い固い意思みたいなのが今にもどんどん強くなっていて、それが何なのか、あたしにすら分からなかった、ただ、
それが「帰りたい」っていう気持ちじゃないことだけは確かだった。帰りたいに決まってる。でも今のあたしから、その帰りたいって気持ちが、固くなってく別の大きな意思に押し退けられて遠ざかってく感じがした。
「死ぬぞ?」
「…」
「死んでも良いんだな!?!!?」
おじさんの怒号にいちいち肩がびくついた。
でも、あたしのこの、黙ってるって行為が、立派な返事のひとつになることを、確信して分かっていた。
……けれど
「…〜っ!この本丸を追放する!!!」
何かに駆られたみたいに一層大声を張り上げたおじさんの言葉の意味を理解して、がばっと顔を上げた。
「つい、ほう、」
「そちらが死ぬ覚悟が出来てるならむしろこちらとしても都合が良い…!手遅れになった本丸がそこまで気になるなら、何も助けてやれることはない!」
本丸削除の準備を!!と、自分の背後に叫び、冷静さを完璧にドブに捨てたらしいおじさんに、頭の隅でこんなのが上層部の政府、もう終わってんちゃう、と全然無関係な方面にツッコミを入れちゃう自分の呑気さがまたも嫌になりながら、おじさんに釣られてあたしも焦った。
でも、それより先に「お待ちを!」「一旦部署の担当者に今一度代わってから…!」「この本丸の戦果を検討し直し…!」「決断が早急過ぎます!」「こんな事態、前例がないんだよ!!」とおじさんの背後にいるらしい大勢の人達が言い争う声がひっきりなしに飛び込んできた。
眼前のカオスの中心が、自分自身とこの本丸なんだと思い直しながらも、どうすれば良いどうするのが一番良い、と混乱する脳味噌をまたフル回転させる。
(あたしがすべきことってなに、)
「止めろ!」「通信を一旦切りなさい!」「しかしいつ男士が現れるか…!!」「三日月はどうなった!!」
(保護されても、帰れる可能性は低い)
ここが消されたら、彼らもあたしも死ぬ、
どうすればいいどうすればどうすればどうすれ
「あるじ、さま」
その時、
背後から、初めて聞く声がした。
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鳥(プロフ) - 読者様 一つ一つにお返し出来ずすみません!コメントありがとうございます!(三)についてですが、推敲が終わったところから随時公開しております!またお時間空いたり思い出して頂けた時に読んでもらえたら嬉しいです。遅筆ですが楽しんで書いております (7月7日 10時) (レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - 初めまして!一気に見させていただきました。とても面白いです!そして続きが気になります。パスワードおしえていただけないでしょうか? (6月18日 13時) (レス) @page50 id: 673a00a1b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ@前垢消えた(プロフ) - 続き楽しみにしてます!!!!! (2023年4月28日 13時) (レス) @page50 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
テオ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ここまで読ませていただき本当に面白いと感じました。表現の仕方がとても好きでストーリーも最高です。推敲が終わるのをとても楽しみにしています。無理のない程度で頑張ってください💪 (2023年4月27日 14時) (レス) id: 85b09c3093 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 始めまして!クロです凄く面白くて続きが気になるのでパスワード教えてくださいm(._.)m (2023年3月30日 1時) (レス) @page50 id: 16daf975b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳥 | 作成日時:2020年2月24日 20時