141 ｢珈琲にはバニラアイス｣ ページ41
…俺は、どうかしてしまったのだろうか。
2徹はしている。3徹に差し掛かった人間は頭がおかしくなるのか？どこからが夢か分からなくなるのか？ここはどこだ。俺は何をしてるんだ。
目の前にカチャリと音を立て珈琲がおかれた。
｢砂糖とミルクは？｣
｢、…、や、結構です、｣
｢そうだ、甘いものは好き？」
｢…え、…？あ、は、はい」
｢珈琲にはバニラアイス。最高の組合わせだ。そうだ！ナッツ…切らしてなかったかな」
カウンターを挟み、間違いなく、燭台切光忠がいる。
刀剣男士である筈の彼が、まるで生業(なりわい)のようにバーテンダーをしている。汗がダラダラと流れそうな俺とは対照的に、鼻歌を歌い出しそうなテンションである。顕現時の鎧を外し、本来着ているスーツのジャケットも脱いでいるのか、ベスト姿だ。
ワインやクラフトビールの棚を背景に立つ彼の姿は、あまりに様になっており、男の俺でも胸にずきりとくる色気があった。やはりこれは幻覚なんじゃないだろうか。しかし、俺の二の句が告げない様子を、燭台切は当然だ、というふうに見ていた。
｢驚かせてごめんね。ここは、主が秘密裏に作った、政府の人達も知らない場所なんだ。大事な用事のある人だけ、ここに呼ばれることになってる｣
｢秘密裏、？｣
｢うん。松田さんには、僕の主から頼みたいことがあるんだ」
｢勿論、内緒でね｣燭台切は手馴れた動作であっという間にバニラアイスを拵えてしまった。｢どうぞ｣と出されたそれに、染み付いたビジネスマンの動作で礼を言った。
ただ、この状況で手をつけるわけにはいかなかった。
｢実は謝らなきゃいけないことがあってね。主はここへは来られないんだ。力が大き過ぎて、ここの人達をびっくりさせてしまうんだよ｣
｢…｣
｢だから事情は僕と、もう一人の刀剣男士が説明するよ｣
｢…もう、一人？｣
｢松田さんが、僕らの話を信じてくれるなら、きっとこれから一緒に仕事をすることになるはずの刀剣男士さ｣
混乱だ。だが考えなければいけない。無意識に、持ってきていた情報パネルを守るように引き寄せた。
｢あ、貴方の主が、私に頼みたいこととは…先日発見された、ブラック本丸のことですね…？｣
｢…うん、そう。それから、そこで審神者に就いた、別の世界から来た女性のこと｣
｢…、知って、いるんですね、｣
燭台切光忠は目の端を緩め微笑んだ。
｢僕の主は、ブラック本丸について、長い間ずっと調査をしているんだ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1683人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鳥(プロフ) - まひろさん» まひろ様 深夜のお返事となってしまいすみません。読み返していただいてると知って感無量です…ありがとうございます、とても遅筆ですが 少しずつこれからも更新していくので 是非また読んでいただけたらとてもとても嬉しいです…* (2月8日 4時) (
レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - 初めてまして。とても素晴らしい作品で、もう何度も読ませていただいてます。更新される度に、1から読み返したくなります！すごく引き込まれる文章で、本当に面白いです。これからも更新楽しみに待っています。 (1月30日 23時) (レス) @page35 id: 8d8aef7fca (このIDを非表示/違反報告)
鳥(プロフ) - 雪見大福さん» 雪見大福さま、コメントありがとうございます…。泣いていただけたと聞いて驚いています。刀剣男士と夢主の葛藤や感情をこれからも大事に書いていけたらと思っています…。ゆっくりな更新ではありますが、楽しみにしていただけるようがんばります…* (1月30日 16時) (レス) id: 3f2e40c263 (このIDを非表示/違反報告)
鳥(プロフ) - 火狩さん» 火狩さま、お返事が遅れてすみません！一気読みしていただいてありがとうございます…！遅筆ですが、少しずつ更新させていただく予定です。また思い出されたときに、読みにきていただけたら嬉しいです (1月30日 16時) (レス) id: 3f2e40c263 (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - 何度も泣きました！これからも無理せず頑張ってください！更新楽しみしにてます (12月23日 5時) (レス) @page26 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鳥 | 作成日時：2020年6月15日 17時
