111 (荘厳) ページ11
血まみれの担架をひっつかみ、廊下の方へ体を振り仰いだ瞬間、がちり、と固まった。開いた障子。縁側の廊下、そこに、…初めて見る神様が立っていたからだ。
(荘厳)
咄嗟に頭に浮かんだ言葉はその二文字だった。
暗がりの荒野を背景に、濡れたように真っ赤な目が真っ直ぐあたしを見ている。ごくりと生唾を飲み込んだ。感情の読み取れない目だ。寒気がするくらい大きくて、美しい、かみさまだ、…どこか、三日月様に似てる、立っているだけで放たれる、圧倒的な存在感、
傍らで、一期一振さんが息を吸って、静かに構えるのを感じる。つまり、この神様は、味方か分からない。どうしよう、
｢…｣
あたしへ真っ直ぐ歩み寄ってくる。おおきな体に圧倒されて、引き下がろうとする自分の足を、何とか担架を握りしめる手で押し留めた。
｢…！｣
長い、床につきそうな程ながい白髪が揺れてる。でもそこにこびりついた夥しい量の血。重ね着した着物の山吹色の元地にも飛び散ったそれは、赤黒く変色していた。傷の上に、更に重なり続けた傷の跡。
ふわりと立ってる耳みたいな癖毛、その右片方が折れていた。目前まで迫ったかみさまの顔の半分に血が流れ、光が反射した刀の柄に気づいたとき、余りの恐怖で目をつぶった。刹那、その大きな体があたしの真横を通り過ぎた。………え、？
｢っ？｣
ばっと後ろを振り返ると、あたし達が運び切れなかった子の一人を、この上なくそっと、優しく抱き上げるその神様がいた、
呆気に取られて、あたし達全員が、彼のその行動を固まって見つめる。
気付けば両腕に二人の子を抱えて、ゆるりと立ち上がったその神様が、静かに口を開いた。お腹の底まで沈み込むような、柔くて深い声だった。
｢小狐丸、と申します。三日月殿から、話は伺いました。此度の手入れ、私もお手伝い致しましょう｣
｢…、ぇ…？、｣
｢三日月殿とこんのすけは、既に手入れ部屋へ向かい準備を進めております。人手は、多い方が良い｣
この、方は、三日月様と、知り合い…なんだろうか。
はなしを、伺った、………ってことは、え
｢ぁ、あの、…あ、たしが、別人だって、｣
赤い目が暗がりの中で鈍く光る。
｢はい。存じております。この数日感じ取っていた微弱な霊気の変化も…此度の出来事を当て嵌めるならば、全て…辻褄が合います故｣
｢…｣
｢三日月殿が…貴方様の部屋へ向かった、あの日の意思は本物でした｣
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鳥(プロフ) - まひろさん» まひろ様 深夜のお返事となってしまいすみません。読み返していただいてると知って感無量です…ありがとうございます、とても遅筆ですが 少しずつこれからも更新していくので 是非また読んでいただけたらとてもとても嬉しいです…* (2月8日 4時) (
レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - 初めてまして。とても素晴らしい作品で、もう何度も読ませていただいてます。更新される度に、1から読み返したくなります！すごく引き込まれる文章で、本当に面白いです。これからも更新楽しみに待っています。 (1月30日 23時) (レス) @page35 id: 8d8aef7fca (このIDを非表示/違反報告)
鳥(プロフ) - 雪見大福さん» 雪見大福さま、コメントありがとうございます…。泣いていただけたと聞いて驚いています。刀剣男士と夢主の葛藤や感情をこれからも大事に書いていけたらと思っています…。ゆっくりな更新ではありますが、楽しみにしていただけるようがんばります…* (1月30日 16時) (レス) id: 3f2e40c263 (このIDを非表示/違反報告)
鳥(プロフ) - 火狩さん» 火狩さま、お返事が遅れてすみません！一気読みしていただいてありがとうございます…！遅筆ですが、少しずつ更新させていただく予定です。また思い出されたときに、読みにきていただけたら嬉しいです (1月30日 16時) (レス) id: 3f2e40c263 (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - 何度も泣きました！これからも無理せず頑張ってください！更新楽しみしにてます (12月23日 5時) (レス) @page26 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年6月15日 17時
