3 ｢…、あの、｣ ページ3
｢は、｣
もう本当にわけがわからない。ここまで来ると涙が出そうになってきて、自分に自分で必死に話しかける。
(大丈夫、大丈夫、おちついて、)
｢…さま、さ、さにわ、｣
暗い隅から声を発している“何か”は、間違いなくあたしに話しかけてるみたいだった。言ってることは理解出来ないけど、その声色から酷くその声の主が衰弱してるのが分かる。も、もし。罠だったら、
(でも、)
もし、あの生き物が、ここについての、何かの手掛かりになるんだったら、
一か八かだ、
｢…！、｣
意を決して、開けかけていた襖を閉めると、より暗くなった部屋のその場所へゆっくりと歩み寄る。
｢……さに、…さま、…にわさま、｣
｢…、あの、｣
｢……っ、｣
暗闇に必死に目をこらす。あたしがこの見知らぬ場所で起きてから、初めてはっきりとした声を出すと、その隅っこにいる動物らしき小さい何かは、あまりに分かりやすくびくついた。
近くまで歩み寄り、放心した。
(＿＿＿＿＿まじで、なんなの…)
それは、血まみれの、……狐だった。
｢申しわけ、…さにわ、さま、もうしわけ、…、｣
クラクラと目眩がしそうになってくる。というかしている。
なんだこれは。本当になんだこの状況は！
狐……というか、あたしの知っている狐とは違う、見たこと無い、デフォルメされた狐だ。まじでこれ、夢でしょ。夢じゃなかったらほんとに何なんだ、こんなのが現実なわけないし、これが現実だとしてもあまりに手の込んだドッキリだ。
こんな喋るぬいぐるみまで置いて、しかもその謎狐は意味わからん程怪我しているときている。この現場の状況を箇条書きにしたら誰だって目を回すに決まってる、何も、本当に何も繋がらない。
和室。趣味の悪い室内。荒野。廃墟屋敷。血痕。ひび割れた短刀。喋る重症の狐。
これは最新の脱出ゲームか何かか？
ここまでくると半ば冗談のように思えてきて、現実に必死にすがりついてた思考もふわふわどこかに飛んで行きそうだ。何をすれば、あたしは、
｢、｣
思考を手放しそうになっていたあたしの足元に、いつのまにか、その狐が近付いてることが分かって、「ひっ」と思わず距離をとって身構えた。そのあたしの仕草に、狐もそれ以上出来ないぐらいびくついて、弱々しい発声で何度も何度も謝ってきた。
｢お、お許しを、…っ、さにわさま、｣
…さっきから思ってたけど、何でこの狐はあたしにこんなに謝ってるんだろう、そして、
(……さにわって、だれ？)
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ゆり - 面白かったです！！続編も気になります。見てみたいのでパスワード教えて下さい。お願いします(＞人＜;) (2022年5月4日 17時) (
レス) id: a0139c2d82 (このIDを非表示/違反報告)
plus__m(プロフ) - 登場人物達の感情や情景がとても細やかに書かれていて、読んでいるだけなのにその場を身をもって体験しているような気持ちになってとても面白いです！特に緊迫したシーンは息が止まっていることも忘れて読んでました笑。続編の加筆修正終わるのを楽しみにしております！ (2022年4月19日 20時) (レス) @page50 id: 5adad14c72 (このIDを非表示/違反報告)
キャンドル(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですね、この作品！続き、楽しみに待っております！ (2022年3月30日 20時) (レス) @page50 id: ff7e3e1da7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ナイ - 続編のパスワードってなんですか？気になるんですがパスワードが分からなくて読むことができません！教えてくださいm(*_ _)mm(_ _)m (2022年3月25日 22時) (レス) id: d118b4d7f4 (このIDを非表示/違反報告)
Momo_Tarou(プロフ) - 鳥さん» 続編おめでとうございます！！！絶対絶対絶対×∞に夜見に行きますので！！！ (2020年2月26日 7時) (レス) id: 55132ee02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年1月29日 3時
