19 ｢前のあたし｣ ページ19
｢て、てあ、て…？｣
こんのすけさんはその黒くて丸い瞳をぱちくりさせ、自分は一体何を言われているのか、と必死に困惑しながら考えてるみたいだった。いや、手当だよ、普通に、
｢そ、そんな、私めに、…、｣
｢…｣
｢お手、を煩わせてはなりません…｣
こんのすけさんが、じりじりとあたしから距離を取るように遠ざかる。
その態度が、意図的なものじゃなく、襲われそうな動物の本能、みたいに見えて眉を寄せた。
(これ、)
なんか、役人の人が言ってたブラック本丸、の意味が、…うっすらと把握できた気がした。
想像だけど、もしかしたら前のあたしは、あたしの想像してたより五億倍は酷い女だったのかもしれない。このこんのすけさんも、あのお兄さんも、きっと前のあたしがここまでズタボロにしたんだ。
主って呼ばれてたし、役人さんもそう言ってた。頭を抱えそうになる。ほんっとなんだこの世界。
｢そんなに怪我させたの、前のあたしなの？｣
｢…、｣
こんのすけさんは口を噤んだけど、その表情が反対に「その通りです」と肯定してた。
あー……なんてこった。ついに、頭痛がしてきた。
こんなんにした同じ容姿の奴が、急に治すぜとか声掛けてきてもそんなの無理じゃん。昨日までいじめてきた女が急に、大丈夫？今日休んだ方が、とか声掛けてきたらマジでなんだよサイコパス？って思うに決まってる。
｢うー…｣
消毒液とガーゼを持った手をへなへなと膝に付け、顔を落とした。どうしよう、治したいけど、これ以上あたしが接近しても、もっと困惑させちゃうだけだ、
目を泳がせて、行き場のなくなった手元を、何度も何度も視線で往復することしか出来なかった。こんのすけさんの、蚊の鳴くような声が聞こえた。
｢申し訳、ありません｣
｢ぇ？｣
｢申し、訳、｣
｢…、｣
｢申し訳ございません、審神者、様｣
｢、？っい、…いや、あたしも無理にってわけじゃないから、｣
こんのすけさんは、まるでこの場の空気に全責任を負ってるみたいな表情で、ひたすら謝罪をリピートし出した。あたしが、この狐を殴ったか何かしたみたいだ。あたしがしようとしてるのは、
(手当なのに、)
もうあたしがこんのすけさんに働きかけるなにもかもが攻撃になるような気がして、眩暈を覚えた。前のあたし、マジでこんのすけさんに、何したの…、？
｢貴方様が、別の方、だと、｣
｢…｣
｢分かってはいるのですが、｣
｢…、｣
｢、ふ、震えが、止まらないのです、｣
｢、｣
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ゆり - 面白かったです！！続編も気になります。見てみたいのでパスワード教えて下さい。お願いします(＞人＜;) (2022年5月4日 17時) (
レス) id: a0139c2d82 (このIDを非表示/違反報告)
plus__m(プロフ) - 登場人物達の感情や情景がとても細やかに書かれていて、読んでいるだけなのにその場を身をもって体験しているような気持ちになってとても面白いです！特に緊迫したシーンは息が止まっていることも忘れて読んでました笑。続編の加筆修正終わるのを楽しみにしております！ (2022年4月19日 20時) (レス) @page50 id: 5adad14c72 (このIDを非表示/違反報告)
キャンドル(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですね、この作品！続き、楽しみに待っております！ (2022年3月30日 20時) (レス) @page50 id: ff7e3e1da7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ナイ - 続編のパスワードってなんですか？気になるんですがパスワードが分からなくて読むことができません！教えてくださいm(*_ _)mm(_ _)m (2022年3月25日 22時) (レス) id: d118b4d7f4 (このIDを非表示/違反報告)
Momo_Tarou(プロフ) - 鳥さん» 続編おめでとうございます！！！絶対絶対絶対×∞に夜見に行きますので！！！ (2020年2月26日 7時) (レス) id: 55132ee02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年1月29日 3時
