刀剣乱舞 -私はブラック審神者らしい-

9 ｢貴方様は、この本丸の、主です｣ ページ9

わたしたちのさにわ。

さにわって……誰？あたしの名前？
あたしの名前は…Aなんだけど、

こっちのあたしの…名前ってこと？

狐はあたしの目の前でふう、ふう、と息を絶え間なく吐いていて、今なおその体の傷に耐えているみたいだった。後ろのお兄さんは、狐の言葉を聞いて、また更に唖然としている。この狐とお兄さんは、知り合い、みたいだ…。じゃ、ここがどこで、どうしてそんな傷だらけなのか、

聞けば、分かるんだろうか。


「、」
(…頭痛くなってきた…、)


信じたくない。


信じたくないし、信じられない、
無理。パニックになる。いきなりこんなの、
(無理だよ…、)

考えれば考える程発狂しそうだ。異世界？
ほんとに待って……これ、現実？

目をぎゅっと一度祈るようにつぶった。この状況的に、なんだろう、ますます悪いことが発覚していく気がすると、すみっこにいる本能があたしへそう、告げて来る、いや、もう、




…もっかい寝てみていい？




寝たら戻れるかもしんない。
そうだ寝て来たんだから寝て帰れるはずだ。
寝たい、今すぐ寝てみたい、が、


｢…っ、はあ、はあ｣
｢…、｣


こんな苦しそうな狐の前で、寝るなんて無神経なことも出来ないし頼めそうもない。
何より眼球が冴え冴えだ。

ああ、埒明かない、何とかしなきゃ、とにかく喋れ、聞け、


｢あの、あたしって、誘拐されたんですか｣


この状況と、あたしが何者なのか知らなきゃいけない。
取り敢えず喋ろ、聞け、情報を何とかして取れるだけ取らなきゃ…！


｢いえ、…、｣
誘拐じゃないらしい。

｢ここは、どこですか、｣
｢ここは、…、本丸です｣
｢………ほんまる｣

(ほんまるって、)

………、

…………本丸って、え、

(本丸って何、？)

あの、時代劇とかで出てくるやつ？？？？？

疑問が喉にせり上がったけど、それを聞いてしまってはますます場を混乱させるだけのような気がしたから、ぐっと飲み込んだ。
困惑している表情が思い切り出てしまっているのは自覚しているけど、今は一体何から質問すればいいか、その取捨選択で精いっぱいだ。

｢、｣

でも、あたしが次の質問を投げる前に、狐があたしに体を正面に向け、顔をまっすぐ見上げこう言った。



｢貴方様は、この本丸の、主です｣



あたしが、反射的には？と言葉を吐いた直後、
ドサッと、後ろで、あのお兄さんが倒れた。

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