24 ｢教えてください｣ ページ24
＿＿＿＿…
｢…｣
これは現実なのだろうか。
息をひそめ、自身の身を守ることだけを考えるようにと…政府の役人、そして…私からもそう告げられた、その方は私の前で再び耳を疑う言葉を口にした。
｢刀の、置き方、おしえてください｣
そう言った後、小さく頭まで下げたその方に、しばらく動けなかった。
別人とはいえ、頭を下げ、ものを頼むその姿から目が離せなかった。
｢あたしが、ここで…何にも出来ないし、何にもしない方が良いことはわかった。……でも、あそこにある刀のどっちも、…人とおんなじ感覚が、ある…ってことなんだよね？｣
｢…、はい｣
｢そしたら…、あんな、廊下とか、畳の上とかに、放っておくわけにはいかないから、…だから、綺麗な布とか、刀が傷つかない道具とかそういうの、この部屋に揃ったりしてないかな、｣
｢…｣
｢あ、あたし、刀触るのさえ初めてなんだけど…！ちゃんと慎重にやるし、こんのすけさんさえよかったら、やり方教えてほしくて…、危ないことしそうになったらあたしのこと怒っていいから、！……それとも、｣
｢……｣
｢そういうのさえ、しちゃ駄目なのかな、｣
がく、と顔を落としたその方に慌てて、ほぼ反射的に場所を告げようと痛む足を持ち上げた。しかし私の血を見たその方から「言ってくれればあたしが動くから！」とすぐに止められ、何度でも驚く。
ほかならぬ、審神者の部屋だ。最低限の物理的な刀の手入れ道具はある。しかし、使った事などあったか。大部屋の一角にある押し入れを指し示し、二振りの刀の元へ歩み寄る間、その方がてきぱきと私の言う道具を出す様子を食い入るように見つめていた。
その方は、見慣れぬ道具や、上等の正絹に｢わ｣とか｢う｣等声を出していたが、私の言葉に忠実に従って、とても丁重に二振りを正絹の上に移し、その作業の始終、痛々しい表情でそのひびや、鞘に付いて消えぬ血の跡を見ていた。
｢…、｣
私自身、二度と人の姿には戻れぬ二振りを見つめ顔がこわばる。特に五虎退…。彼の最後の姿は…
……思い起こしただけで、息が出来ない。
｢これで良い？｣
｢…、はい｣
｢、｣
刀を見つめるその方の横顔が、未だ眉根を寄せたものだった為、私は思わず声をかけた。
｢…、何か不安なことが、｣
｢え？｣
｢いや、思い詰めた様子でしたので、｣
｢…や、…｣
｢…？｣
｢……ほんと、現実感が、まだ無いんだ、｣
その言葉に、何も言えなかった。
私も…同じだった為だ。
25 (偉い！あたし本当に偉い！)→←23 ｢何もせぬことが、｣
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ゆり - 面白かったです！！続編も気になります。見てみたいのでパスワード教えて下さい。お願いします(＞人＜;) (2022年5月4日 17時) (
レス) id: a0139c2d82 (このIDを非表示/違反報告)
plus__m(プロフ) - 登場人物達の感情や情景がとても細やかに書かれていて、読んでいるだけなのにその場を身をもって体験しているような気持ちになってとても面白いです！特に緊迫したシーンは息が止まっていることも忘れて読んでました笑。続編の加筆修正終わるのを楽しみにしております！ (2022年4月19日 20時) (レス) @page50 id: 5adad14c72 (このIDを非表示/違反報告)
キャンドル(プロフ) - めちゃくちゃ面白いですね、この作品！続き、楽しみに待っております！ (2022年3月30日 20時) (レス) @page50 id: ff7e3e1da7 (このIDを非表示/違反報告)
白夜ナイ - 続編のパスワードってなんですか？気になるんですがパスワードが分からなくて読むことができません！教えてくださいm(*_ _)mm(_ _)m (2022年3月25日 22時) (レス) id: d118b4d7f4 (このIDを非表示/違反報告)
Momo_Tarou(プロフ) - 鳥さん» 続編おめでとうございます！！！絶対絶対絶対×∞に夜見に行きますので！！！ (2020年2月26日 7時) (レス) id: 55132ee02b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年1月29日 3時
