許してはいけないはずなのに ページ3
Aside
「………はぁ…やっちゃったかも……」
ぽつり、とだだっ広い廊下で独り言を零した。
話すつもりなんて微塵もなかったのに。
彼の……まふまふの仇を打つためにここに忍び込んだというのに。
恩師である96猫さんを騙して。働き口を貰うという建前の元忍び込んだこの王宮で。
腐った王国の頂点である彼に近づけたというのに。
「………いつまで続けるんだろ…」
最初はただ、殺してやろうって思ってた。
毎朝の飲む飲み物に毒でも盛って殺してやろうと。
でもあの日。初めてあった日。
「散歩行こうや。かえでさん」
とふわりと笑った笑顔に胸が傷んで。
この人を殺すなんて、と考えてしまった。
「……裏切り行為だよ…」
ごめんね。まふ。
私はまだ、決心が弱かったみたいで。
仇をとるにはもう少し時間がかかりそうだよ。
ーーーー
96猫side
欠伸をひとつ落としながら静かにかえでが出ていったばかりの王の部屋をノックする。
「…だれ」
「わしや。愛しのまほーつかいさまやでぇ？」
「入って」
おーおー今日は随分機嫌悪いなぁなんて思いながら手早く部屋に入り薄暗い中毛布の中にくるまる我が主に声をかける。
「痛むか？」
「……特には」
薬の副作用のせいでは無いらしい。
となると……
「なんや。わしの送った……かえでは気に入らんのか？」
危ない。本名を伝えるところやった。
Aから何故か知らんが偽名を伝えられてそれで呼んでくれ。って言われたんやった。
「んーん。めっちゃええ子で助かっとるよ。でも…」
「でも？」
「……メイドから王族はきびいよなぁ…」
……
………？
………………？？？？？？
「おま！？もしかしてｩｳﾙﾙﾙﾙﾙﾙﾙｩかえでに惚れたんか！？」
「なんや今の気持ち悪い食べ方みたいな声は！？ってかそんなおっきい声で言うなや！！！あとお前言うな！！！！」
「今はそんなことどうでもええねん！！！！はぁ！？！？！うちの子はあげません！！！」
「お前の家の子じゃないやろ！！！！！ってか勝手に惚れたとか言うなや！！！！！！！」
ぼぼぼっと髪色と同じぐらい赤くなった王……さかたんに盛大なため息をかました。
「さかたん。昔馴染みだから教えといてやるわ。あの子だけはやめとき。」
「え、なん」
「ええか。よーく聞け。これはあの子がまだうちに来て間もない時の話なんやけど……」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2022年1月21日 3時
