驚くほど平凡な ページ2
坂田side
ふぁ、、と欠伸を鳴らす。
起きたと同時にいつも飲んでる物をこくりと飲み込んだ。
これを飲み始めて一体何年経つのだろう。
効果は徐々に出ていることを実感するが結果に結びつくのはまだまだのようで。
「はい。今日の飲み物ですよ。」
いつの間にか近くに来ていたかえではことりと白湯を僕のサイドテーブルに置いた。
「んぇぇ、、白湯やん、、、」
「はい。白湯です。」
「実質タダのお湯では、、」
「じゃあ水道水とかの方がいいですか？」
お腹、壊しますけど。
そうやって楽しそうに笑うかえでを見てここに来てから随分表情が豊かになったな。としみじみ感じた。
「…？なんですかそんな顔でこっち見て。しばきますよ」
「たまにかえで僕のことすごい貶すね！？あとしばくって何！？」
「ぶっ飛ばす」
表情どころか口調まで豊かになりやがって…
と心の中で拗ねながらもそんなかえでに対して愛おしい気持ちはあるわけで。
「…なぁかえでの昔話聞かせてや。」
「…私の、ですか？」
「ふふっそう。かえでの。」
「何も面白味なんてないですよ。両親の顔も知らない孤児でしたから。」
ふと、表情に影が落ちたのを見て「ああ、両親はNGワードなんだな。」と少し彼女を知れた気がして嬉しくなった。
「孤児の時は？どうやって生きとったん？」
「そうですね…。96猫さんが身元を引き取ってくれる前は…」
そう言って少し考えるように黙り込んだ。
僕が続きを待っているとふぅ、と軽いため息を零しながら口を開いた。
「大切な人と一緒に生きてましたよ。多分年齢は王様と同じぐらいだったと記憶してます。」
“大切な人”
その言葉が妙に引っかかりつい矢継ぎ早に質問をしてしまった
「その人は男？どんな人やったん？名前は？」
自分でも何を焦ってるのかわからずに、でも知りたくてつい聞いた。
「男でしたよ。でも見た目は私よりも華奢で女の子らしかったですけどね。優しくて、頼りになって……素敵な人でした。名前は………」
そこで少しはっ、と口を止めた。
しばし迷って沈黙が流れたあと、ゆっくりと「……ごめんなさい。忘れてしまいました。」と悲しげな表情で謝られてしまった。
「そん…」
「ごめんなさい。私もういかなくては、それでは王様。失礼致します。」
ぱたり、と扉がしまった。
大切な人の名前を忘れるなんて本当に有り得るのか？
もしかしたらかえでは彼の事を……
そう考えてもこのモヤモヤが晴れるわけなんてないのに。
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作者名：きなこもち | 作成日時：2022年1月21日 3時
