僕のモブ友。【時透無一郎】

プロローグ ページ1

私はクラスでただ1人のモブのような存在だ。

　また同じクラスになった時透さんは相変わらず人気者で、テレビでもプロ棋士として注目の的。モブの私にとって、手も届かないような存在。なのにいつも話しかけてくれる。なんでか分からないけど。

　ピンクの花吹雪が舞うこの季節、新しいクラスにまた(・・)馴染めそうにない。

　人気者の集うクラスだから。

　廊下を歩く度にすれ違う他のクラスの子が言ってたんだ。

「里芋組になりたかった」
「美人とイケメン揃いだ」

　って。

　なんで私は里芋組なんだろう。里芋は、嫌いなのに。

　っていうのは関係ないか。

　私は新学期から1週間遅れで学校に来た。
　新しい環境が怖いのか、ただ単に身体がストレスに弱すぎるのかは分からない。もしかしたら暖かくなったことに調子乗って、半袖半ズボンで寝たのが原因かもしれない。
　
　……でもこれだけは言える。

　時透さんと別のクラスになるかもしれないという不安があったってこと。

　本人には恥ずかしくて一生言えないと思うけど。

　最初にも言ったように、私はクラス唯一のモブである。これは断言できる。

　時透さんはこんなモブに話しかけてくれる唯一の"モブ友”。友達でも無い関係だけど、話しかけてくれるだけで私は本当に救われている。

　1人は好き。でも、寂しい。
　私にはこんなジレンマがあった。

　竈門さん達と1度でもいいから、私もその中に加わって仲良く話したい。けど私は不釣り合いだ、とか。

　1人の方が何をやっても怖くないから、とか。

　皆と孤立してる私はまるで、月とすっぽん。油と水。

　話戻して時透さんとはそんな関係性だけど、話しかけてくれるということに勝手に安心してる私が言う。

　私は時透さんの"モブ友”だ。

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