好き、嫌い、普通。 (ページ4)

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懐古、ページ4

先程の五倍程重い沈黙が場を覆った。

誰か沈黙を破ってくれ、誰も沈黙を破れない。

その二つの感情が私以外に蔓延している。

『何も始まらないなら帰ります。』

「ごめんAちゃん、もうちょっと待ってくれる？」

帰ろうと席を立って鞄を取ろうとして取れなかった。

藍色の髪を持った少年が私の鞄を取ったからだ。

『何するの、幸村精市。』

少々違和感のある呼び方だが私と本人には馴染みのある呼び方だ。

呼び捨てにも、苗字呼びにも、ましてや先輩、なんてのに私が馴れないから。

小学生の間は精市さん、だったのがたった二年間会わなかっただけで呼び方が変わる。

私も年をとったな、なんて言うと年寄りみたいだ。

今この場で最も年下なのだが。

私の誰に対しても尊大な態度の所為で軽蔑の目線を向けられている。

日頃の行いが悪いからか。

ドスン、とわざと音を発てて固い感触のパイプ椅子に座り直した。

腕と足を組んでキッと睨み付ける。

その瞬間に幸村精市を除くその場にいた皆がギョッとした顔をした。

腹立たしく思いまた眉をしかめた。