最後の雨

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車に乗り込んで電話をかける。



ひゅ「あ、A？
　 さっきゆうたにパスしてきた。」


「ごめんね、寝なくて大丈夫？」


ひゅ「俺が好きでやってるんだから
　 ごめんより有難うの方が嬉しい。」



そう言うと彼女は少し笑って有難う、と言った。



ひゅ「んで、どした？」



煙草に火をつけながら聞くと、少し黙り込む彼女。



「…最近、誰かに見られてるなって思うことが多くて。」



ひゅ「は？？」



「インスタのDMにも
　コムドットのゆうたくんと付き合ってるんですかとか
　一緒に歩いてる後ろ姿盗撮されたやつとか
　ゆうたくん関係のDMが届いたりしててさ、」



ひゅ「それ、ゆうたは知ってんの？」



問いただすといや…と歯切れが悪くなるA。



ひゅ「なんで言わねえの？」


「…心配させたくなくて。」



なんとも彼女らしい理由だった。

いつもゆうたや俺らのことを優先してくれる。


Aだってゆうたと一緒にいたいはずなのに
いつも快く送り出してくれて
仕事もあるのに撮影の手伝いに来てくれたり。



「それに、本当に気のせいかもしれないし。」



実害が出てしまっている時点で気のせいなんかじゃない。

でもAは優しいから。


俺らがここまでこれたのは視聴者の力が大きいのを彼女も分かっているから。
悪く言いたくないんだろう。



ひゅ「…分かった。

　 とりあえずゆうたには黙っとくから
　 なんかあったらすぐ俺に連絡寄越よ。」


「ごめんね、」


ひゅ「A。」


「、有難う。」



電話を切ってどうしたものかと考えながら煙草を蒸かす。


結局何もいい考えは浮かばないままゆうたから交代のLINEが届いた。

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