課長がお呼びです。 (ページ26)

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「錦戸やけど？
Aはもう寝てる。
こんな遅うになんか用？」

自ら、騙されてます、
言うてるようなもんやろ。これ。

伊藤莉菜は、あざ笑うかと思いきや。

「そうなんですか。
課長、気をつけて下さいね。
あの子、誰とでもその、
やるって有名です。
イケメンなら誰でも良くて。
課長は飛び抜けて出世頭だし、
コレクションの一人にしたいのかも。
で、遊びに遊んだ後は、最終的には、
セレブ婚狙ってますから」

そう返してきた。

伊藤莉菜の言葉に、
アホみたいに傷ついてて。

なんでやねん。

「そんなこと分かってるわ。
こっちもこんな女、本気なわけなやろ。
適当に遊んで捨てるつもりやから」

そう言うて、電話を切ったそばから。

すぐに大倉に電話。

ことの顛末かいつまんで説明して。

Aを誘惑してくれって頼んでみる。

「Aちゃんのこと、
誘惑するふりしたらええんやろ？
キスするフリとか？
分かった。
ちょっとおもろそうやし」

簡単に、納得してくれた。

こいつは、簡単にのるはず。

もしそうなったら俺は・・・

俺はどうする？

ああ、もお。

結局、自分を試してんねん。

朝早く。

包丁のトントンって音と、
ええ匂いで目が覚めた。

見渡したら、やっぱり俺んちやし。

なんで？

寝ぼけた頭でよく考える。

昨日、俺、どうしたっけ？

「課長、起こしちゃいましたか？」

Aが俺の顔を覗き込んで。

全部がつながった。

そうや。

こいつがバーで寝てもうて。

泊めたんやった。

こいつ、全然、この状況に動じてないやん。

伊藤莉菜の言葉が胸から離れへん。