課長がお呼びです。

４４ ページ44

なのに。


「もう眠いん？」


そう聞かれただけ。

思わず目を開けて。


「違います」


言ってから、
もう一度、目を閉じる。

そしたら、やっと、
通じたみたい。


甘い香りがして。

ふわって。

優しいキスしてくれた。


でも、オフィスでされたような、
あんな大人っぽいのじゃない。

軽く触れただけ。


「これが初めてのキスな？」


なぜか、念押しされた。


「嫌です。
初めてはオフィスです。
嬉しかったから・・・」


訂正しとく。


錦戸課長が、困った顔になった。

この顔は可愛いくて好きだけど。

困らせたくない。


「やっぱり、今のが初めてでいい・・・」


言い直したら、
ぎゅって気が遠くなるほど、
きつく抱いてくれた。


こんなに幸せってあるんだ。


それから。


莉菜の事を聞かれて。

正直に話しちゃった。


ほんとは莉菜が怖いこと。

でも莉菜しか仲良くしてくれる人いない事。

莉菜に命令されて、
チョコを渡した事。


でも密かに憧れてたから、
勇気出すチャンスだって、
思った事も。


「これからは俺がおるから。
嫌やのに付き合うてる理由なんかないで。
もう離れ。
あの子とおると心配や・・・」


優しく言って、髪を撫でてくれた。


信じてもいいかな。

４５→←４３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す