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｢星導くん、遅いなー……｣
掠れた声も、部活に励む生徒たちの声で消えていった。
夏のくせに、なんだか体に冷えを感じる。
空を見上げると、染み渡っていた朱色が徐々に薄くなっていた。ちらつかせている霧色の月に目を細める。
来る気配もないし、帰るかぁ……。
本当は来て欲しいななんて思ってる反面、まだ来ないで欲しいななんて思っていた。矛盾してるなぁって一人で苦笑をする。
会って何を話そうとか、どんな風に見ればいいのかなってずっと考えてた。考えて、分からなくなった。
いつも通り接すればいいのに、いつも通りが分からなかった。
変に意識してるみたいで、心の中がなんか気持ちが悪い。
この感情なんなの本当に。
歩いてるはずなのに、やけに帰り道が遠く見える。
自分からやっている事なのにね。彼とのやり取りが心地よくて素っ気ない態度をとるのも、今更どう態度を変えればいいのか分からないだけ。
本当は、もっと女の子らしく可愛い返答が出来たらいいのに。口に出るのは可愛くない言葉ばっか。
あぁ、ほんと。我儘で欲張り。
彼からの好意を良いように使って、関係を崩さないようにしてる私が醜くて嫌い。
終いには、彼の好意が私じゃなくて他の人に向くの事を恐れている。
彼から漂う甘い匂いが、魅力的な宇宙を想像させる。
その匂いが耳に染み付いている。
それがもう、消えないノイズだとわかる。
もうそこは知らない街だった。魔法のステッキを一つ振ったみたいに、私の世界は変わってしまった。私の日常は、彼の目の奥にある宇宙と繋がってしまった。
足がついているのに、足の感覚がなかった。歩いている実感がなかった。
知らない感情が、私の胸を描き抉った。この感情の答えを知りたい。でも、知りたくない。それの繰り返し。
知ってしまったら、もう前のようには戻れない気がした。
そのもしもの事実が、堪らなく怖い。
それでも。もし今振り返って、後ろに彼がいたら。そうしたら私は、私は。
夜が鳴く。蝉が笑う。星座なんてなく、私は醒めている。
小さく息を吸った。小さく吸ったはずなのに酸素が肺から溢れかえって、私は背を丸めてむせた。
もし、振り返って彼がいたら。この気持ちに句点を打とう。
もし、彼がいなかったら。私はこの気持ちに嘘をつこう。
だからどうか。
「……そこにいて」
そう願うのは、やはり我儘なのだろうか。
星導くんの好きな綺麗なままの私でいられなくてごめんね。
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いな(プロフ) - しゅしゅさん» 嬉しいお言葉ありがとうございますт т私自身後輩×先輩のお話大好きなので、是非これからも楽しんでいってください！ (4月13日 23時) (
レス) @page7 id: d495fd3e3f (このIDを非表示/違反報告)
しゅしゅ - いなさんのお話どれも素敵で綺麗で大好きです♡私的に後輩くんがおせおせのお話大好きなので嬉しいです、更新頑張ってください応援してます！ (4月10日 22時) (レス) @page3 id: 40ecb4ca5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いな | 作成日時：2024年4月10日 0時
