何も起こらない.......筈だった【童磨】

【5話】(流血表現有り) ページ6

私は走り続けた



裸足のまま



落ちているガラスの破片を踏んだって


足を止めなかった




痛くて痛くてたまらなかった


かなり深く切ったから

なかなか血が止まらない



足を踏み込む度に、


砂が傷口に入ってしまう



あぁ



痛い痛い痛い止まりたい止まってしまいたいお父さんは？まだ見えないの？どうして？そもそもなんでガラスが落ちてるのよ！街中なのに！危ないじゃん！




チラリ




目の端に、薬屋が見えた




A「(あそこで、薬と包帯を買って傷の手当てを.....)」




ふと気づく




A「(馬鹿！今の私は無一文じゃない！)」




下駄だって履けていないのだ


お金なんて持ってる筈がなかった




薬屋の前を、歯をくいしばって通り過ぎる









ずっと、走り続けた







肺が痛くて

息をするのが辛くて

足が重くて

血が流れて

砂が入って

汗が気持ち悪くて

まとわりつく髪が邪魔で

着物が乱れて

感覚が消えてって





それでもずっと


走り続けた





ようやく見えた、お父さんの背中


私は叫んだ


「お父さん!」


と



振り返るお父さん


その顔は


酷く怯えたようだった






驚いて、見上げた空は青くなくて


灰色の雲が、空の青を喰っていた

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