交錯する線 part 2 【Kento】 (ページ8)

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翌日まだ日の高いうちに中島健人はやって来た。

いらっしゃいませと言うと、彼は
「こんにちは。楽しみにしてたんだ」と笑顔で言う。

「お時間あるならご試着されませんか？」

「うん、着てみたい」

いつものように部屋に案内し出来上がったスーツとシャツを渡す。

シャッとフィッティングルームのカーテンが開き着替え終わった彼が登場した。

「めっちゃいい感じ！
着心地もいいし最高！」とご機嫌だ。

上質なスーツをまとった彼は、洗練された大人の男性だった。

自分の仕立てたスーツ姿の中島健人を前に、達成感が押し寄せる。

「気に入って頂けて良かったです」

「中村サンに作ってもらえてよかった。ありがとう」

「こちらこそありがとうございました」

彼は満足気に頷くと、じゃ着替えるねと言いカーテンの向こう側へ行く。

ほっと息を吐く。

彼がこの店に初めて来てから1ヶ月強。
怒涛のようだった。

無事納品できて身も心も軽くなる。

カーテンが開く。

お疲れ様でした、と言いスーツとシャツを受け取る。

「ではご用意しますのでしばらくお待ち下さい」

中島さんは、ありがとう、と言いご満悦な様子でソファに腰掛けている。

スーツの用意ができると、私はそろりと彼の元へ近づき

「あの、中島さん。
少しお話ししてもいいですか？
この前のことなんですけど…」

と切り出した。

「うん、考えてくれたんだ？」

と立ち上がって微笑みかけてくれる。

「この前中島さん真剣だったから、私も真剣に答えないとなと思って。
私も中島さんとお話してみたいって思いはあります。だから私でよければぜひ。
ただ、私のせいでお仕事に悪影響になるようなことは絶対ダメなので、ほんとに見られない場所でお願いします」

一息に言うと

「ほんとに？まじで？やったー！
めっちゃ嬉しいんだけど！」

と少年のようなかなりのハイテンションで喜んでいる。

嬉しそうな彼を見るとこちらまで笑顔になる。

「じゃあ中村サン絶対近いうち誘うから。
連絡先教えてもらってもいい？」

自分の連絡先が中島健人のスマホに登録されるなんて夢ですら見たことがないよと思いながら、自分のIDを教える。

登録されたことを確認すると、

「ありがとう。すぐ連絡するよ」

と彼は嬉しそうに言った。