交錯する線 part 2 【Kento】 (ページ15)

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中島健人side

五分五分だと思った。

彼女が俺の誘いに乗る確率だ。

彼女と出会って1ヶ月と少し。

何回か顔を合わせて物理的にも心理的も距離を縮めようとしたけれど、正直彼女の出方の見当がつかなかった。

近づくとオトせそうな雰囲気を醸し出すのに、少しでも離れると歯も立たない頑丈な鎧をまとう。

その鎧を脱がせたいのになかなか思うように進まない。

やはりと言ったところか、彼女からの連絡はなく、やっと連絡が来たと思ったらスーツが出来上がったという業務連絡だった。

彼女なりの誠意なのだろう、店に行くと彼女の口から直接彼女の思いを話してくれた。

経緯はどうあれ、結果的に連絡先をゲットできたことに安堵する。

そしてようやくランチデートまで辿り着いたのになんで鎧着て来るかなぁ。

スーツ姿はもちろん似合っているんだけど、すごくオンモードで手強い感じが否めない。

ガードがちっとも緩まないことに笑いさえ出る。

もっとリラックスしてほしいのに。

ただアイドルとプライベートで会うことに、とても理解を示してくれているので、それはありがたいとも思っているのだけれど。

初デートだからね、と言うと彼女の挙動が変わるのがすぐにわかった。

女の人との食事は全部デートなんですか、だなんて純粋に尋ねてくる。

そんなわけないじゃん。

意識して欲しいから言ってるんだよというセリフは心のうちに留め何食わぬ顔でパスタを食べる。

ちらっと彼女をみると彼女も素知らぬ顔でパスタを食べている。

俺の真意はたぶん伝わっているはずだが、平気なふりをしてもくもくと食べる彼女がいじらしくなって思わず笑ってしまう。

なかなか思うように進まねーなーと思いながらも、
今はそれすらも楽しかった。

彼女が帰り支度を始める。

個室を出てしまう前に、俺は「中村サン」と呼び彼女の手を繋ぎ止めた。