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中島健人side
気づかれないと思っているのだろうか。
人の視線は思いの外わかりやすいのにーー。
採寸しながら彼女が自分を見たことが分かると、そちらを見ずにはいられなかった。
彼女が動揺するとわかっていても。
まさかよろけて結果的に自分が抱き止めることになることまでは予想できなかったが。
自分の腕の中で小さくなっている様子や、力なく俺の胸を押し返す腕を感じると、自分の狩猟本能が掻き立てられた。
彼女の髪から柔らかな香りがしてくる。
このままでは自分自身がやばいと思い、体を引き剥がした。
ソファに座らせても動揺がおさまらないのか彼女はなかなか目を合わせてくれない。
俺と彼女の間には、彼女の築いた分厚い壁があった。
かなり線を引かれている。
正攻法しかない。
回りくどい言い方ややり方では、彼女の壁はびくともしない。
優しく手を握ると彼女がビクッとするのが伝わってきた。
なるべく自分の思いが伝わるように優しく丁寧に語りかける。
まだ納得せず断ろうとする彼女の言葉を菊池の名前を出して退路を塞ぐ。
思い出すだけで嫉妬しそうになる。
気になっているから話したい。
誠実に言葉を紡ぐ。
"恋"という単語をチラつかせると我に返ったように離れていってしまった。
困らせたいわけじゃない。
どうか俺のことを少しでも意識して。
そう思いながら見た、帰り際見送ってくれる彼女の顔はやっぱり困ったような表情で。
俺はその表情さえ可愛いと思ってしまうのだ。
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にこ(プロフ) - risaさん» コメントありがとうございます。更新のペースはゆっくりになるかと思いますが頑張ります!引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです♡ (2021年9月24日 14時) (レス) id: c73915c859 (このIDを非表示/違反報告)
risa(プロフ) - ドキドキしながら読ませていただきました♡ これからの展開が楽しみです!更新楽しみにしています! (2021年9月23日 18時) (レス) id: fe924e0240 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にこ | 作成日時:2021年9月18日 9時