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ポーン
到着の音を合図にぞろぞろと降りる人について自分たちもエレベーターから降りる。
エレベーターから関係者専用入口へ歩きながら
「次回、完成したスーツのお渡しになります。3週間ほどかかりますけど大丈夫ですか?」
と隣を歩く彼を仰ぎ見、尋ねた。
「大丈夫です。できたら連絡もらえます?」
「はい、ご連絡差し上げます」
「おっけー、じゃあ完成を楽しみにしてる。」
明るく言った後、急に声のトーンが落ちた。
「ちょっとのお茶もだめ?」
さっきまで隣で並んでいたのに、私の行手を塞ぐかの様に彼はいつの間にか私の正面に回り込んでいた。
壁に右腕を預けて寄りかかりながら私の返事を待っている。
「さっきも言いましたが、シャツなどの相談はお店でできますから。
やっぱりアイドルは撮られたらダメですよ」
私たちの隣をスタッフなのか関係者なのかビルの事務員なのか、仕事終わりであろう人が通り過ぎてゆく。
局内では割とこういう話してても誰も気にも留めないんだな、などと呑気なことを考えてしまう。
「俺、今まで撮られたことないよ?
絶対バレない自信あるもん」
壁に寄りかかったまま彼は言う。
「えぇ、そうですね、それはアイドルとして素晴らしいと思います」
そう答えたらなぜかニヤリとされる。
「俺が撮られたことないって知ってんだ?」
やばい。
「あ!いや!その!有名ですよね!
中島さんは完璧なアイドルだって。
そういう話よく聞きますよね」
「ふーん、"よく"聞くんだ?」
墓 穴 !
「それは言葉の綾といいますか…とにかく!
何か有ればお店でお話伺いますので!」
殊更、お店でのところを強調する。
「今日のところはこんなもんか。」
と彼は小さく呟き
「わかった。
でも本当にシャツやネクタイも考えてほしいと思ってるから。
とりあえず近いうちに連絡する」
そう言うと壁から離れ、片手をひらりと上げ
「じゃ中村サン、帰り気をつけて」と動揺する私を見送るのだった。
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にこ(プロフ) - risaさん» コメントありがとうございます。更新のペースはゆっくりになるかと思いますが頑張ります!引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです♡ (2021年9月24日 14時) (レス) id: c73915c859 (このIDを非表示/違反報告)
risa(プロフ) - ドキドキしながら読ませていただきました♡ これからの展開が楽しみです!更新楽しみにしています! (2021年9月23日 18時) (レス) id: fe924e0240 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にこ | 作成日時:2021年9月18日 9時