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「…っせーな。」
「え?」
聞き返してくる鬼の脛をバンっと蹴る。
不意打ちだったからか、鬼はふらついて、
ドスンッという音をたてて後ろ向きに倒れた。
脛は弁慶の泣き所というが、
鬼の泣き所でもあったようだ。
呻くような声をあげて、鬼が足を抱え込む。
「ぷくくっ!いたそうでちゅね!」
先程の鬼の真似をして、鬼の髪の毛をぐいっと掴む。
俺を涙目で睨む鬼の顔は、とても綺麗だった。
瞬きするたびに睫がぱちぱちと揺れる。
噛みしめられた唇からは真っ赤な血が流れている。
気付けばその唇にそっと自分の唇を重ねていた。
「っー!?」
バンっと鬼に押し返されて我に帰った。
鬼を見ると、まだ混乱しているのか目を丸くして、
口を押さえながらわなわなと震えていた。
そんな鬼に、もともとなかった恐怖心なんかは
もうマイナスレベルまで来ていて、
不覚にも、可愛らしいと思ってしまった。
「お宝なんて、もういらないかも…。」
鬼の胸ぐらを掴み、ドンと床に叩きつけ、
ガバッと鬼の上に覆い被さる。
地面に押し倒された鬼は、苦しそうな顔で、
やっぱり俺をギロリと睨んでくる。
けれど俺にとってそれは、
煽っているようにしか見えない。
「ねえ、お宝なんていらないから、
鬼さんちょうだいよ…」
そう言って、噛みつくようにキスをした。
鬼の唇から、またどろどろと血が流れてくる。
口のなかは鉄の香りが充満していた。
「ももたろうさんは、きびだんごよりも、
鬼さんが食べくなっちゃった…」
口についた鬼の血を親指で拭い、ペロリと舐めると、
錆びた鉄の臭いと、血の甘い味がした。
The Little Mermaid (ymhk)→←ももたろさん(cnhk)
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作者名:?? ますだ とちおとめ | 作成日時:2018年1月25日 21時