* あ ー ち ゃ ん * ページ46
田宮 side
『ねえ』
64「うわあ!」
『そんなにビックリした?』
ごめんね。と言いながら隣に座ってきたこの女性は球団職員の朝比奈さん。春季キャンプで沖縄に移動してきた日は練習は組まれていなくて、入団同期の8人でホテルの目の前のビーチに来ていて、みんなでワイワイ遊んでたけれど少し疲れたから、砂浜に座ってみんなを遠巻きに眺めていたら、急に後ろから声をかけられた。
『陽が傾き始めた時間の海って青春だなって思うんだよね』
海の水を掛け合ってキャッキャするとか高校生かよ…。いや高校生か。と自己完結させながら一眼レフのファインダーを覗いてシャッターを切る朝比奈さんの横顔は大人の女性って感じでドキドキした。
『あーちゃんさ』
64「あーちゃん?」
『裕涼だから、あーちゃん。嫌?』
裕涼ちゃんはよく言われるけれど、あーちゃんは初めてだ。大丈夫です。好きに呼んでください。と言えば、飛び切り嬉しそうな顔で、やったあと喜ぶから俺と同い年でも通じるのではないかと思った。
『こんなキレイな夕日とカッコイイあーちゃんがいたら、写真撮るしかないやろ』
春季キャンプ沖縄バージョン初はあーちゃんのアー写で決まりやね。と立たされる。言われるがままにポーズ取って、パシャパシャと朝比奈さんがシャッターを切るから、さながらモデル気分。
『あーちゃん!見て、これめっちゃカッコイイ』
ほらほら!と画面を覗き込めば朝比奈さんの顔と急接近。俺のドキドキが朝比奈さんに聞こえちゃうんじゃないかとヒヤヒヤ。どう?と言われて、はっ、として、カメラって凄いですね。って返事をする。
『何言ってんの?被写体がカッコイイからや』
64「そんなこと無いっすよ。朝比奈さんが」
『それ!朝比奈さんってイヤや』
Aさんって呼んでや。とだいぶ年下の俺でもキュンとしちゃうくらい可愛い表情で言うこの人は、きっと相当な小悪魔なのだろう。
64「A…さん?」
『何で疑問形なん?』
64「Aさん」
『はあい?』
よいしょって朝比…Aさんが立ち上がって、これから嬉しい事も辛い事も楽しい事も悲しい事も一緒に過ごすんだから。苗字は嫌や。これから、よろしくね、あーちゃん。と言って、暗くならないうちに帰っておいでね。と残してホテルに消えていくAさんの後ろ姿を見送る。
64「初めて話す人にカッコイイって初めて言われた」
めっちゃ嬉しい!
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作者名:歌子(かこ) | 作者ホームページ:https://bit.ly/35Iex9O
作成日時:2018年10月26日 22時