* ス ペ ー ド * ページ27
鍵谷 side
9「おお、Aちゃんどこ行くと?」
『トイレです』
夕飯を済ませて、テーブルで大富豪をしていたら、いきなりAが座っていた椅子から床にお尻をついて降りるから、目の前の卓がびっくり。俺はもう慣れたけど、そっか。卓はこれが初めてか。
9「1人で大丈夫?」
『大丈夫です!』
少しでも筋肉落ちないように、しないとリハビリキツイですからね!とお尻歩きで廊下を歩くAちゃん。あれで大丈夫なん?と鍵谷に言うと、最初は右足でケンケンしながら行こうとしてて、危ないからダメ。って言ったらあれになった。と必死にお尻で歩くAちゃんの背中を見送る鍵谷。
30「あの子ね、アリゾナキャンプまでにある程度治そうとしてるからさ、色々と必死なのよ」
9「アリゾナには着いてきてほしいなあ。今回の優心が発熱した時も助かったし、コーチもトレーナーもだいぶ助けられてたみたいだし」
30「ただ心配なのはさ、年が明けたら各々自主トレでしょ?」
9「こっちに残すと?」
30「かかりつけ医はこっちだよ?」
9「事情を話して鎌ヶ谷の寮で生活とかは?」
30「あくまでAは球団職員だから、上の判断を仰がなきゃでしょ」
9「そうやね」
30「心配なのはわかるけどさ、見守ってあげよ?」
あ、帰ってきた。と言い少しずつ近づいてくるAが、なんだか初めてハイハイし始めた赤ちゃんみたいに思えて微笑ましい。
『陽平さん、抱っこしてください』
30「はーいよ。よいしょ」
『ありがとうございます』
いやー、疲れた。トイレ行くのも一苦労ですね。とトランプを持ち直す。そりゃツライと思うよ?と思う。だってあんた、まだ術後何日も経ってないんだからさ。
順番、私ですか?と聞かれたから、そうだよ。と答えると、早速スペード縛り。とか言ってスペードの6を出す。うわ、縛りとかめんどくさ。
9「スペードない。パス」
30「3人しかいないのに、そんなことある?」
9「あるから出せないの」
『陽平さん、卓さん突き放すチャンスです!』
9「何?Aちゃん、鍵谷の味方なん?」
いやー、そう言うわけじゃないですけど。席的に?と。まあ、確かに。長方形のテーブルの長辺に席が2つずつ。計4つで。俺の隣にAが座っていて、Aの前に卓が座って。だから俺の前は必然的に空席。
30「俺の事、大好きだもんねー?」
『早くスペード出してください』
30「おい」
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作者名:歌子(かこ) | 作者ホームページ:https://bit.ly/35Iex9O
作成日時:2018年9月24日 20時