それはまるで魔法のように【７】 (ページ13)

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＊２人の時間 ( 掃除 ) ＊ページ13

清宮 side

大浴場の浴槽をスポンジでゴシゴシ洗っていると、シャワーで攻撃をくらう。顔を出して犯人を確認すると、楽しそうに立っているAさん。

ＳＮＳ用に写真撮るから、顔だけこっち向いて？と言われ指示に従う。本当なら、今すぐに反撃したいけれど、カメラを壊すわけにいかないから、少し我慢。

『いーね、選手が寮の掃除やら洗濯やらをやってる姿は高感度アップ間違いなしや！』

21「そういうもんですか？」

『そういうもんです』

森本くんの置き土産のヨーグルトで、チーズケーキ作ったから、お掃除終わったら食堂おいでー。と背中を向けた瞬間、持っていたスポンジをAさん目掛けて投げると、キレイに背中に的中。

21「よっしゃ！」

『幸太郎ちゃん？』

カメラを脱衣所に置き、俺が当てたスポンジを持って投球準備に入るから、慌てて近くにあったデッキブラシを持って構える。

『幸太郎ちゃん。あんまりお姉さんをからかったらあかんよ』

21「Aさん、未成年でもプロ野球選手ですからね？」

『そんな、簡単に打たせるわけないやろ！』

宮西さん直伝の投球フォームはキレイな放物線を描いて、俺の目の前にある水の溜まった洗面器に勢いよく入るから、中の水がバッシャーンと飛び散って、スボンがビシャビシャ。

21「Aさん！」

『なんだい？幸太郎ちゃん」

21「ズボンがビシャビシャ」

時には戦略も必要なのだよ。少年。と言って大浴場を出ようとするから、蛇口を捻ってホースから水を出して、ホースの口を潰して水圧を上げて、狙いを定めれば、今度はAさんの頭に命中。

『もう！幸太郎ちゃん！』

何して遊んだの？というくらいビッショリ濡れているAさんは、真面目に掃除をしている俺のところに来て、もう、早くしないとチーズケーキ無くなっちゃう！と言いながらデッキブラシで浴室の床をゴシゴシ洗い出す。

21「わーい、ありがとうございます」

『わーい、ちゃうわ。今更可愛こぶんなや』

途中ちょいちょい水の掛け合いとかやったから、もう時間のかかること。普段なら３０分で終わるのに、１時間かかった。

『ほっぺに泡ついてる』

21「どこですか？」

『取ったるから、目え瞑って』

言われた通り目を瞑ると、洗面器に溜めていたであろうぬるま湯が、勢いよく顔にかかる。うわー、最後の最後にやられたー。

Aさんと本気になって遊べる、この時間が好き。

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