それはまるで魔法のように【２】 (ページ49)

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＊本番＊ページ49

You side

納会が始まって１時間３０分。こそこそっと会場から抜けてきたお二人。ステージの袖から会場を覗けば、そこには顔も名前も知らないが、プロ野球選手がたくさん。あ、上沢だ。

『さらっと、流れだけ確認しますよ』

私の持っているインカムで合図をすると会場の照明が落ちます。そしたら、マリンバをステージに搬入してください。暗いですから気を付けてくださいね？準備が出来たら卓さんが頭の上で袖にいる私に準備ＯＫと、丸を作ってください。

『そしたら、このサイリウムで…あ、まだ折ってなかった。この、緑色のサイリウムを＂さん、ハイ！＂と振るので練習通り演奏してください』

話終えても反応なし。というかガチガチに固まっている２人。面白いからとりあえずパシャっと写メ。気が付いてこちらをチラッと見るけれども、何だか余裕がなさそう。

『緊張……してます？』

6「サヨナラがかかった打席より緊張すんねんけど』

『まあ、大丈夫ですよ』

場数がちゃうねん、お前とは。こっちは初めて。口から心臓吐きそうや。と翔さんらしからぬお言葉。卓さん、全然口開かんし。１ヶ月間めっちゃ練習したんですし、身体が覚えてるので大丈夫ですよ。と励ましてみる。

『自分が楽しむことが1番ですから、ね？』

ほら、スタンバイしてください。とお二人の背中を叩く。なあ、気合い入れてや。と背中を向けた翔さん。バシッと平手で叩けば、いったいわ。強過ぎんねん。と文句。

9「Aちゃん、俺も」

卓さんの背中は、翔さんより少し小さいから、翔さんより力を込めて叩けば、思いのほか大きな音と、痛っっったーー！と叫ぶ卓さん。会場がざわざわしたのは気が付かなかったことにしよう。

『１曲目さえ終わってしまえば、あとは司会の方が何とかしてくれますから』

じゃあ、始めますよー。とお二人に伝え、インカムを持った会場の方に照明落としてくださーい。と合図を送れば、バチッと会場の照明が落ちたのと同時に、お二人がステージの真ん中までマリンバを転がす。

準備できた。と卓さんが頭の上で丸を作れば、手に持っているサイリウムで指揮をする。さん、ハイ！マリンバを叩き始めるとステージの照明だけ徐々に明るくなる。

急に暗くなるもんやから、停電かと騒いでいた会場が、一気にステージに注目する。さあさあ、北海道日本ハムファイターズが誇るキャプテンと選手会長のマリンバデュオの始まりです。

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