それはまるで魔法のように【２】 (ページ32)

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＊匂い＊ページ32

石川 side

G49「ちょっと待っとって」

急いでリビングから玄関に行くと重たい荷物をドサっと置いてパンプスを脱いでいる、グレーのパンツスーツ姿のA。

G49「おかえり」

『ただいま』

この何気ない一言のやり取りで、今、こいつと一緒に住んでんねんなあ。と実感する。

『誰か来とるの？』

G49「ライン見てへん？」

『ああ、ごめん。今見た。私邪魔やない？外で済ませてこようか？』

G49「ええよ、大丈夫。それより仕事で疲れてんねんから、帰ってきたのに外に出たないやろ」

『まあ。でも日ハムの人の迷惑にならんやろうか』

いや、迷惑どころか、あいつらは大歓迎やと思うで。やって今の今まで話題の中心におった、朝比奈A張本人なんやから。

G49「野球選手覚えられる、ええ機会やん。紹介したるからリビング来てや」

さっとAの荷物を持ってリビングに向かう。何これ。何が入っとるのかわからんけど、めっちゃ重いやん。職場からここまで結構距離あんねんけど……筋トレしながら帰ってきてるのと一緒やん。とリビングの扉を開けようとしたら、後ろから、待って！と呼び止められる。

『今日、一部ミイラ化した現場行ってきてん。一応職場でシャワー浴びてきてんけど…においついてる気がすんねん。におって？』

G49「は？大丈夫やろ」

『一応！今から会う人、初対面なんやで？汗かいてただでさえ臭くなってるのに、それプラス腐敗臭って最悪やん』

お願い！と手を合わせて懇願されたら、しゃーないな。とスカした感じで返事するけど、内心ドキドキ。小さいAの頭と肩口をにおうけど何もしない。

G49「むしろシャンプーと洗剤の匂いしか、せえへん」

『ほんま？』

G49「ほんま」

『ほんまのほんま？』

G49「ほんまのほんま！ほら行くで」

リビングの扉を開けると一気にこちらを振り向く３人。後ろから、ちょこちょこ付いてくるA。３人はわけわからんという顔で、俺の説明を待つ。

G49「紹介します。高校の同級生で現在ルームシェア中の朝比奈A。で、日ハムの背番号８番・近藤健介、背番号１２番・松本剛、背番号１５番・上沢直之」

と紹介すればお互いによろしくお願いします。と挨拶。とりあえず、私、お風呂入ってくる。あ、腐敗臭嗅ぐ？と初対面の人らの前でエゲツない冗談をかますA。ええから、早よ行け！と言えば、はーい。と言い荷物を持って脱衣所に消えた。

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