それはまるで魔法のように【２】 (ページ26)

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＊Ｔの気持ち＊ページ26

西川 side

9「まあ、モテるんやろうね」

あの見た目と中身のギャップがすごかけん。落ちてしまう男は何人もおるんやなか。と卓さんも自らの携帯でＳＮＳ、#チューバのお姉さんを検索する。

9「ほら、これとかギャップの塊やろ」

卓さんに見せられたのは、チューバを回し担ぐ数秒の動画。画面をタップして動画を止めないもんやから、壊れたＤＶＤプレイヤーみたいに何度も何度も同じ動画が再生される。

9「この前のライブで楽器紹介があったんやけど、Aちゃんの楽器、重さ10kgあって、管楽器の中で１番肺活量が必要なんやと」

7「札ドの時とか、あれ担いで吹きながら走り回ってましたよね」

体力と肺活量のオバケやん。と言えば、下手したら俺らより体力あるんじゃなか？と返事が返ってくる。流石にそれは…と思ったけど。可能性はなきにしもあらず。やな。

7「卓さん的には、ああいうタイプってどうなんですか？」

9「Aちゃん、みたいなってこと？」

7「はい」

9「うーん…どんなんやろうねぇ？」

俺の勘やけど、卓さんはAが好き。それを自覚しとんのかは定かやないけど、態度で丸わかりやねん。Aの事に関してはやけに積極的で、わかりやすくタラシになる。そして何より。

9「俺がそんなに話さんから、Aちゃんくらい色々話してくれたり、構ってくれたりしたら、嬉しいなとは思うっちゃけん」

何を思い出したのかは知らないけど、Aの事を話しながら少しだけ照れる。見てるこっちが、中学生か！と突っ込みたくなるくらい、純粋な恋なんやと思う。

7「卓さん積極的に色々話しするタイプやないですからね。騒がしい方がバランス取れるのかもしれないっすね。」

9「今までが、静かな感じのタイプの子としか付きおうてないから、想像できん」

7「卓さんの彼女事情は知りませんけど、まあ、真逆のタイプってのも案外相性良かったりしますからね」

実際のところ、Aの事、どう思ってるんですか？と核心に迫れば、うーん…いい子やなぁと思うし、可愛いなぁとも思うけん。やけどそれが好きとかそういう感情なんかはわからん。と曖昧な答え。

9「助けてもらったけん。そりゃAちゃんって人は好きになるやろ。人間としてな。」

とあくまでも恋愛感情について口では肯定しない卓さん。言動ではもう好きって感じやのに。いつ気がつくのか楽しみやな。と思いながらビールを口に運ぶ。

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