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それから怖い任務が終わるたびに、よほど任務が重ならない限り五条さんは私の事を高専で待ってくれていた。
五「ほら、おいで」
『五条さん…』
またあやす様に背中をトントンされて抱きしめられて、五条さんの香水の香りに包まれる。
一度泥酔して五条さんの腕の中で一夜を過ごしたからか、距離感のハードルは格段に下がっていた。
その後も何回か一緒にご飯にも行き、泥酔しては五条さんの部屋で夜を明かす事があった。
初日は本当に記憶が飛んでいたけど、流石に回数を重ねるたびに自分が過ちを犯している事にも気付いていた。元彼では味わえなかった快楽を自分から五条さんに求めている記憶だってしっかり残ってる。
任務の恐怖や、誰かに縋りたいと思ってしまうのを全部五条さんにぶつけている自覚はあった。
朝になれば『何も覚えていない』の一点張りの私に、五条さんも「何も無かったよ」と私の嘘に合わせてくれる。
五条さんの優しさに漬け込んで何してるんだろうと自己嫌悪に陥ることもしばしば。
元彼の事もあって、私は誰かにとって大切な人になれるなんて思えないのに。
夜の任務を終えてほぼ誰もいない高専の廊下を歩く。
今日は流石にいないだろうと思っていたら、五条さんはちゃんと待ってくれていた。
五「遅いから心配しちゃった」
そう言いながらまた私を抱きしめる。
フワリと香った香水の中に、いつもと違う女性ものの香りが混じっていた。
あ。そうだ。この人は、別に私じゃなくてもいい人。
優しくしてくれるのはただ後輩が心配なだけ。
何を勘違いしそうになってたんだろう。
急激に冷えていく頭。
『夜からの任務だったので…。五条さん、別に私の事なんか待ってくれてなくても良いんですよ?』
五「…A?どうしたの?」
凄く傷ついた様な顔をしたAに五条は不思議そうに首を傾げた。
『私の事なんかより、彼女さんの事気にかけてあげて下さい。私もう大丈夫ですから』
五「彼女?何言ってんの?」
『今日の五条さんの匂い、いつもと違う』
数秒考えたあと、思い出したように「あー」と声を出した。
五「多分今日任務で助けた子の匂いだよ」
『へ?』
五「何?妬いちゃった?」
『いえ…その…最近私、五条さんの家にお邪魔したりしてたので…ちょっと踏み込みすぎたなって反省してるんです』
五「気にしなくて良いのに」
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作者名:K | 作成日時:2022年3月16日 0時