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暫くは貰った手切金で暮らしていた。
部屋で1人、呆然と流れるテレビ番組を見る。


『私、また逃げちゃった』


ポツリと呟いた独り言が自分の心をさらに抉った。


呪術界から逃げ、会社からも逃げ、私の人生は逃げてばかりだ。
自分の不甲斐なさや彼への怒りで堰を切ったように涙が流れる。
ぬるくなった缶ビールの残りを煽ると満杯状態になりつつあったゴミ箱に無理やり突っ込んだ。


結局のところ、私は誰にも必要とされていないのかな。
彼氏も私を置いて浮気相手に乗り換えた。
会社にも辞表はすんなり受け入れられた。


『同じクソでもより適正のある方を…か』


何故か最後に七海と話した事が脳裏に浮かんだ。
あるじゃない。
私を必要としてくれている場所が。


21時か。出るかな。
自然とケータイに登録してある七海に電話をかけていた。


5コール目で出た七海はあの日と変わらず落ち着いた声色だった。


七「お久しぶりです。どうしたんですか?突然」


『こんな時間にごめん…』


私の沈んだ声に気付いたのか、電話越しの七海はフゥと息をついて続けた。


七「何かあったんですね?」


『うん…いつものバー、来れる?』


七「わかりました。1時間後でいいですか?」


『うん。ありがとう』


必要最低限のメイクをして家を出る。
適当にタクシーを拾い、久々に七海と通ったバーに足を向けた。

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作者名:K | 作成日時:2022年3月16日 0時

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