03 その瞳に ページ3
ー…あれは夏のジリジリと暑い日だった。
小さい頃、俺はよく婆ちゃんに近所の駄菓子屋へと
連れてってもらった。
母親には内緒でと、お菓子を買ってもらって目の前の公園の木陰で食べるのがいつもの日課。
なのに、いつも二人で座るベンチには先約がいた。
白のツバ広ハットに、白のワンピースを着た女の子が、一人でぽつんと座り何をするわけでもなく、ある一点をずっと見ていた。
『返してよ!』
『いいじゃん!ちょっと借りるだけなんだから!』
女の子の視線の先には、一人の男の子の持ち物であろうサッカーボールを、三人組が無理矢理手の中から奪って遊び始めた。
流石にこの光景に対して、横にいたばあちゃんが三人を注意してくると俺に言って足を踏み出した時だった。
『それ、あんた達のじゃ無いんだから返しなさいよ』
真っ直ぐで力強い声の主は、先ほどベンチに座っていた女の子。
俺が気づいた頃にはボールで遊ぶ三人組にそう言い放っていた。
『あ?お前には関係な…』
ー…バチーンッ!
言い切る前に、ボールを奪った男の子は目の前の女の子に思いっきり頬を叩かれた。
その威力は少し離れた俺たちの所にも聞こえるくらいの音で、この女の子の行動には横にいたばあちゃんが一番驚いていた。
『ボールも買えない貧乏人が調子のんな!』
華奢でぱっと見病弱に見えるような女の子から、想像もつかないほどの罵声が三人組に浴びせられた。
『…っ!、うわーんっ!!』
三人組も流石に女の子の見た目のギャップに驚き、泣きながら奪った男の子にボールを返してそそくさと逃げ帰った。
『…っ、ありがとう!』
『あんたも男ならこのくらい言わなきゃダメよ』
女の子にありがとうと再度お礼を告げると、その男の子も小走りでボールを抱え込み帰って行った。
『あんた、男の子相手に強いねー』
ばあちゃんが女の子の後ろからそう声を掛けると、女の子はくるりと振り向き、その強い眼差しで静かに俺達へと目線を向けた。
その瞳は真っ直ぐで、とても歳が近いとは思えない程彼女は大人びていて、太陽の下で輝いて見えた。
ーーー
「…、またか」
ふと目が醒めるといつも見慣れた天井で、携帯のアラームが鳴るよりも先に起きてしまった。
あれから何十年も経つというのに、彼女の事を忘れられないでいた。
「…A」
夏になると思い出す彼女の姿。
きっと、あれが俺の初恋。
そして、今も彼女に恋してるんだ…。
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揶揄 - 最近見始めました!すごく面白いです! (2019年9月22日 9時) (レス) id: f13e29755c (このIDを非表示/違反報告)
虎苦迷花さん推しのぴかちゅう - まぢすこ…(( (2019年9月21日 20時) (レス) id: d00440de79 (このIDを非表示/違反報告)
金亀子?(プロフ) - めちゃめちゃ面白いです、!!! (2019年9月7日 23時) (レス) id: a3d0a4cc33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:如月香葉 | 作成日時:2019年7月30日 22時