終わらない夏ー完結ー (ページ20)

今日:6 hit、昨日:27 hit、合計:32,550 hit

20 お邪魔しますページ20

花火大会当日。
私は一人キャリーケースを引いて姫路駅へと降り立った。
小さい頃は親に車で連れてきて貰っていたから、電車で来るのは初めてだ。
会社には有給として3日ほど休みを貰えたのだが、結局山田先輩とはあれから話す事も出来ず。
唐突な告白に固まる私達を見た山田先輩は、ハッと我に返って私達を置いて逃げてしまった。
帰ったら改めて話をしないと…。

ー…それよりも、本当にいいのかな？

先程、携帯にヒカルさんから連絡が来ていたのだが、それは一人じゃとても気まずい内容だった。

とりあえず、荷物をホテルに置いてから向かおうかな。

私は近くのタクシーを捕まえて、ヒカルさんが事前に予約してくれているホテルへと向かった。

ーーー

蝉の鳴き声がそこら中から聞こえ、ジリジリとしたアスファルトの照り返しに、こめかみから汗が流れ落ちる。

「ここ…？」

ホテルからタクシーに乗って辿り着いた場所は、大きい平屋の家。
高鳴る鼓動を抑えつつ、勇気を振り絞って玄関横の呼び鈴を押してみた。
少ししてガラリと扉が開いて中から出て来たのは、背の小さい白髪のおばあちゃん。

「あの、ヒ…圭太さんに言われて先に一人で来させていただいたんですけど…っ」

「あー！あの子が言うてた子ね！暑い中ご苦労やねー。さ、中に入り」

おばあちゃんの反応はとても可愛らしく、見知らぬ私も暖かく迎えて入れてくれた。

「お、お邪魔します」

私は緊張の面持ちでヒカルさん家に足を踏み入れた。
中は以前リフォームしていたのを知っていたけど、動画で見るよりもとても綺麗な内装だった。