12 これが恋 ページ12
『オトンもオカンもあんまり好きやないな。いつも喧嘩してばっかやし』
『それが普通なのかな…』
『なんなん?そんな質問してきて』
『二人とも私の事でよく喧嘩してるから…、それが普通のことなのか分からなくって…』
『…』
俺のオトンとオカンは自分達の事で良く喧嘩しては仲直りしてを繰り返しているが、それが彼女側は彼女自身について喧嘩をずっと繰り返しているとなれば、あまり普通とは言えないかもしれない。
その現場を何度も見ているなら、尚更自分の事で喧嘩されるのも気分は良く無いはずだ。
それは彼女の言葉や表情を見て何となくそう思った。
『あのさ、こっちにいる間は俺と遊ぼうや』
『え…?』
『家に居たく無いから外に出てきてるんやないの?だったら、一人でぼーっとしてるよりも誰かと遊んだ方が気紛れるやろ?』
なんで一回しか会った事もない彼女にこんな提案したのかはわからない。
でも、これ以上彼女の苦しむ顔を見たく無くって、咄嗟にそんな事を言ったんだと思う。
『ほんと…?』
さっきまで悲しい顔をしていた彼女は、その言葉を聞いた途端目を輝かせて俺の方に顔を向けた。
『お、おう』
『ありがとう!』
嬉しそうに微笑んだ彼女を見て、俺の心臓がうるさく鳴った。
…なんやこれ。胸が苦しいし、なんなら痛い。
初めての感覚にグッと胸辺りの服を掴んだ。
『そういえば、君の名前は?』
彼女の質問に一呼吸置いて、俺はゆっくりと口を開いた。
『…圭太』
『圭太くんか、宜しくね』
ベンチから立ち上がった彼女は、俺の前で笑顔で手を差し出してきた。
その手を握り返した時、俺はこの胸の痛みの正体がわかった気がする。
ああ、彼女に、
Aに恋をしてるんだと。
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揶揄 - 最近見始めました!すごく面白いです! (2019年9月22日 9時) (レス) id: f13e29755c (このIDを非表示/違反報告)
虎苦迷花さん推しのぴかちゅう - まぢすこ…(( (2019年9月21日 20時) (レス) id: d00440de79 (このIDを非表示/違反報告)
金亀子?(プロフ) - めちゃめちゃ面白いです、!!! (2019年9月7日 23時) (レス) id: a3d0a4cc33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:如月香葉 | 作成日時:2019年7月30日 22時