キミだけのonly one ー完結ー (ページ11)

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11 好き？ページ11

「忘れ物とか大丈夫ですか？」

「あー、多分大丈夫やと思うわ」

玄関先で靴を履いている彼にそう聞いてみると、そんな答えが返ってきた。

あの後、起きた彼は直ぐに帰って仕事があるという事で、ご飯もシャワーも断って自分の家に帰ろうとしている。
あまりの慌しさに対し、ほんの少しだけ寂しい気持ちも芽生えた。
出会ってまだ数時間なのに、彼と一緒にいた時間は苦痛など一切なく、久々に心地いいと感じてしまったからだ。
かと言って、好きという感情とはまた違うと思う。
有名人にまた会いたいと伝えたら彼は困るに違いない。
所詮、彼と私の住む世界は違うのだから。

「ほな、たった数時間だけど世話になったわ。マジで助かった」

靴を履き終えた彼は立ち上がってくるりと身体を私の方へ向けた。

「いえ、お仕事頑張ってください。動画も見ますね」

これで別れの挨拶は終わり。
ここで彼とお別れして、私はまたいつも通りの日常に戻る。
…そうなる筈だった。

「え？」

私の前に無言で手のひらを差し出す彼。

「携帯貸して」

「え？どこかに連絡に使うんですか？」

「そう、だからはよ」

携帯の充電が無くなったのだろうか、渋々ズボンのポケットにしまっていた自分の携帯を彼に差し出すと、彼は私の前で何かを打ち込んだ方思いきや、直ぐに携帯を返却してきた。

「もういいんですか？」

てっきり、誰かに電話でもするのかと思っていたのに、彼はどうやって相手に連絡を取ったのだろうか？

頭に？が浮かびつつも、携帯を受け取ると私の携帯が音を出して鳴り出した。
画面に表示されたのは、見知らぬ番号とヒカルという名前。
思わず携帯から目線を外して顔を上げると、目の前では携帯を耳に当てている彼の姿がそこにはあった。
携帯を手にキョトンとしている私を見て、彼は呼び出しを切った。

「それ俺の番号やから、そこからLINEとかも登録しといて」

「え、なんで？」

「また会いたいから、それ以外ある？」

真顔でサラッと当たり前のように答えたヒカル。
その瞬間、私の胸がざわついたのを感じた。

数時間しか時間を共にしていないのに、ヒカルの言葉でこんなにも一喜一憂するなんて…

神様、これは恋なんでしょうか…？