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今度は優しい手つきで、ひんやりした腕を布団の中に入れてやった。
相手は寝ているのだから、その手に口紅を乗せるなんて、
無意味な行為だということは分かっている。
それでも。
もしかしたらあの日のように、
目を輝かせて、口紅を受け取り、
綺麗だと言ってくれるのではないかとどこかで期待していた。
受け取られずに転がり落ちた口紅を拾い上げ、
当たり前のことなのに、
どこかショックを受けている自分に乾いた笑みが溢れた。
春 「ははっ、
オレ、何やってんだ……。」
口紅を近くのテーブルに置けば、
立て付けが悪いのか、コロコロと転がり出し始めたので、
自分のライターを取り出して、口紅に添えて置いた。
しばらく黙って彼女の様子を見ていたが、
今更になって酒の効果が出てきたのか、
不意に訪れる眠気。
どうせ今日の仕事は夜からだ。
春 「お前が先に起きて、
俺のこと、起こせよ……。」
三途は椅子をベッドに近づけて、
座ったまま上半身を彼女の傍に預けて眠りについた。
朝。
この地下の部屋は
光が入らないため明るさは変わらないし、
外の音は聞こえないのだが、
時計が差すのは、朝6時。
Aが大体いつも起きている時間だ。
『………ん、』
ここは、どこだろう。
目を開けると、自分の部屋とも、
梵天のビルの部屋とも違う天井。
ベッドも少し硬くて、
かけられている布団は薄めで、肌寒く感じた。
身体には何やら色々繋がっており、動かしずらい。
ただ、動かしづらいのはそれだけではなかった。
左側を見ると、綺麗なピンク色の髪の毛。
布団に流れているサラサラとしたそれに手が伸びる。
『はる、ちよ…さん……?』
目の前の人物が私の声に反応して
ピクリと動いた。
一瞬間があった後、勢いよく顔を上げたその人と目が合う。
春 「おっ、お前……!」
『春千夜さん…、あの、』
ここはどこで、一体何があったのか聞こうとしたとき、
春千夜さんが立ち上がって私を抱き締めた。
『え?あ、のっ…、』
春 「いつまで寝てんだ、バカ。」
いつもより随分覇気のない彼が
何となく少し震えているような気がして、
点滴が引っ張られないか気にしながら、
ゆっくりと背中に手を回して、摩ってみた。
春 「……人の気も知らねーで、余裕かよ。」
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きりん。(プロフ) - yumさん» この春千夜は、好きになっちゃいますよね。作者ですらそう思います。笑 嬉しいお言葉、ありがとうございます! (2022年12月7日 21時) (レス) id: c098a97284 (このIDを非表示/違反報告)
yum - いや、もう、マジで神です。春千夜、、、ヤバい、カッコよすぎる。きりん。さん天才すぎます。語彙力ゴミですみません💦 (2022年12月7日 19時) (レス) @page50 id: 078a32e2da (このIDを非表示/違反報告)
きりん。(プロフ) - 紫月??_低浮上_さん» 可愛いですね!ほっこりしました(^^) (2022年12月7日 19時) (レス) id: c098a97284 (このIDを非表示/違反報告)
紫月??_低浮上_(プロフ) - きりん。さん» ʕ•ﻌ•ʔฅ´- はい! (2022年12月7日 14時) (レス) id: 6f5f0e8f06 (このIDを非表示/違反報告)
きりん。(プロフ) - 紫月??_低浮上_さん» 実は、私的にはさらに甘い展開を、この後ご用意しております!ぜひお楽しみに! (2022年12月7日 14時) (レス) id: c098a97284 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりん。 | 作成日時:2022年11月25日 19時