口説かないで下さい 3 【三途春千夜】

一刻も早くこの手で ページ46

春 「まだ銀髪が何処のどいつか分かんねぇのか！！」





九 「今終わる！！」





春 「早くしろ！！！」





九 「分かってる！！ちょっと黙ってろ！
……出た！
三途！河口組の若頭だ！！」





春 「河口組だァ？
去年、実質傘下に下した組織じゃ……、
……アイツか！！！」





組の名前を聞いて、ピンと来た。
若頭の男は、最後までぐちゃぐちゃ泣き言ばかりで
情けない男だった。
あまりの見苦しさに、殺そうとして斬りつけたが、
一命を取り留めた、能無しだ。





アイツなら俺を恨んでAを拉致したのも頷ける。
あの時、首元にチラッと見えた傷は、
自分がつけたものだったのに、
と、思いっきり唇を噛み締めた。





九 「今マイキーにも事情を報告した。
処分の許可は下りたが、
蘭と竜胆もそっちに向かってるから、早まるな！
あんなモン寄越したってことは、
確実にお前への罠だ！！」





春 「んなモン待ってられっか！！
とにかく俺は会社に乗り込んで
クソ専務と、女をシメ上げる！！」





九 「待てっつってんだろ！
は？切りやがった……。クソが！！」





ビルに入ると、受付の姿はもう無かった。
おそらく俺に封筒を渡せば帰っていいことにでもなっていたのだろう。
するとそこに竜胆から連絡が入った。





竜 「ヤク中？
さっきお前の部下の車とすれ違った。
誰かの車を追いかけてるっぽいけど、
様子がおかしいんだよ。」





春 「オカシイって何だ！！」





蘭 「落ち着けってー。
若頭が乗ってると思って、俺らも追ってみてんだけど、
この車、何処かに向かってるってよりは、
適当に流してる感じなんだよなー。
俺らを分散させようとしてるっつーかさ。」





竜 「多分この車、銀髪は乗ってねぇな。
別で逃げてて、事が済むまで雲隠でもする気じゃね？」





春 「いや……、俺に復讐する気なら、
Aの所に向かった可能性が高い。
アイツを俺の前で痛めつけて、
高みの見物ってのが、姑息な小物のアイツらしい。」





竜 「たしかに。
とりあえずあの変な車は、
お前の部下に任せてそっちに向かう。
送り込んだ部下のGPS、動いてねぇんだろ？
……もしかしてAちゃんも、
その会社にいるんじゃねぇのか？」





そう言われてあのふざけた写真をもう一度よく見る。
窓のない、コンクリートの部屋。
座らされている椅子も、普通のパイプ椅子。
見れば見るほど怒りが込み上げる。
それを何とか抑えて写真を見た。

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