口説かないで下さい 3 【三途春千夜】

大きな落差が誘うのは ページ36

こうして私が大恥をかいた日、
終始上機嫌の春千夜は仕事の為、私を家まで送ると、
にやにやした顔のまま帰って行った。





私の家には、ココくんと、蘭ちゃん竜ちゃんから、
大量のたこ焼きが届いており、
また恥ずかしさが込み上げてきた。
とりあえず皆んなの前で
あんな事を言ったんじゃなくて良かった。
……抱きついたのは忘れたいけど。





とりあえず蘭ちゃん竜ちゃんには
連絡先を伝えるのも兼ねて、お礼のメッセージを送った。





蘭ちゃんからの返信はデートのお誘いで、
お疲れ様でしたー、と返して終わり。
竜ちゃんからは、ココくんの連絡先が送られてきて、
ココくんにもお礼のメッセージを送った。
何故住所を知っているかは、あえて聞かないことにした。





たこ焼きは1日で食べ切れるはずもなく、
冷凍庫に入れたが、パンパンになってしまった。
しばらくたこ焼き生活だ。





次の日からは、
春千夜はまた忙しくなったらしく、
またスイートルーム飲み会メンバーも都合がつかず、
春千夜の部下さんが私を家まで送る日々が始まった。





私の方はというと、
たこ焼きをお弁当に持って行ったら、
同僚や後輩が羨ましがってくれて、
翌日お裾分けしたら、
一気に冷凍庫からたこ焼きは姿を消した。





仕事の方は、
1週間ほどで大きなプロジェクトの方向性が固まり、
下準備や根回しを担当していた私達の仕事はひと段落。
これを軌道に乗せるのは別部署の精鋭チームの仕事。
後は成功を祈るだけだ。






そのことを春千夜にメッセージで送ってみたが、
待てど暮らせど、返信はなかった。
2週間近くも、連絡の一つも寄越さない男に、
さすがにイラッとはしたが、
アイツは、私の知らない世界で生きている。
あまりそういうことは望んではいけないのかもしれない。
これが反社と付き合う上では普通なのか。






会いたい、なんて、私一人の我儘だろう。
とりあえず無事ならいいけど、と、思うことに。
身体中につけられたキスマークが少しずつ薄れ、
消えていくのを見ては募っていく寂しい気持ちには、
見て見ぬフリを決め込んだ。





『何だか、遠距離恋愛してるみたい。
声くらい聞かせてくれたっていいのに。
……電話してもいいのか、
部下の人に聞いてみてもいいのかな……。
いや、ただでさえ迷惑かけてんのに、
困らせたくないし、やめよ。』





甘やかされて、愛されて。
いきなりしばらく会えなくなって。
その大きな差が、寂しさを深くしていた。

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