くるいづき

ほんとうは 康平 ページ31

康平と付き合ってから、数ヶ月


デートは何回もした、キスももう済んだ...もっと先のステップだって


けどまだ1度も彼としたことがないことがある


この間一緒に下校している時ふと思い浮かんだのだ


電話越しに彼の声を聞いたことがない


そう思って彼に電話したいと頼んだ、が


「…嫌だ、俺、電話好きじゃないし」


と、こちらが押しまくっても承諾してくれなかった


『はあ…』


深いため息をひとつついてベッドに沈む


スマホの画面を見ると時刻は21時を回っていた


通知欄には彼からの「バイトおわった」の文字


おつかれさま と一言返して再び画面を閉じる


…べつに会いたいななんて思ってないし。


声が聞きたいとか、ちょっと寂しいとか


そんなの考えてませんから？


どうせ、こんなの康平に言ったって意味ないしばーか


と部屋の天井を見上げると着信音が鳴る


『えっ…康平』


あの電話嫌いの彼がかけてくるなんて何用だ…


内心で茶化しつつも少し震える指で電話に出た




『…も、もしもし』


「…おう」


おう、とは…


『バイトおつかれさま、なんかあった？』


「いや…前にAが電話したいって、言ってたから」


『っ…そっか、嬉しい』


「ん…」


康平はいつもそうやって私を想っていてくれるよね


気持ちが通じ合ってるってことかな。


「…黙るなよ、話して」


『あ…ごめんね？改めて康平のこと好きだなあって』


「…」


『電話好きじゃないのに、かけてくれてありがと』


「別に…それほどでも」


『…もしかして照れてる？』


「ばか、そういうの気づいても言うな」


『ふふ、いつもの仕返し』


ねえ 今すぐ会って抱き着きたいくらいすき





それから彼の家に着くまで電話を繋げようという事になり


ふたりでいろんな話題を出し合った


梅雨で髪の毛がふわふわ浮いて鬱陶しいとか


康平の自転車で2人乗りをした際、隼人くんの


食べてたアイスが制服にべったりついて説教した話とか


実はお互いの印象が最初はあまり良くなかったことも


そんなこともあったねと笑いながらだべり続ける


気づけば通話時間が1時間を裕に超えていた


『そういえば、あとどれくらいで着きそう？』


「あーそうだな…もう少しかかるかも」


「…あのさ、A」


『ん〜、なに？』


「…ちょっと、外出て来られるか」


彼の声と同時に家の外で自転車のブレーキをかけた音


まさか、そんなわけないと思いつつ玄関のドアを開ける

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