くるいづき

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翌日 満が入院したと聞かされた私は放課後


彼の入院先へ真っ先に走った 昨日の授業後、私が


私用で一緒に帰れないと伝えたあと梓ちゃんと


天体観測の下見のために肝試しの進達と山奥の館へ


行ったらしく、そこで事件に巻き込まれたらしい


…5人のうち生きて帰ったのは満と進だけだった。


病室のドアを開けると、既に目覚めて着替えた彼


『満…！』


「A…」


いつも通りの様子に安堵で涙が溜まり


思わず駆け寄って彼の胸に飛びつく


『…心配したじゃん、ばか』


「ごめんな、何ともないから大丈夫」


優しい手つきで頭を撫でられ、ほろほろと


私の涙が彼の服を濡らした


「ほら…もう泣かない」


両手で頬を包まれ、顔をあげられる


指で涙を拭き目を見つめられ大好きな声で慰められる


「A、俺…」


満が何か言いかけたとき、病室のドアが開く


『あ…梓ちゃん、進』


「Aちゃん！」「なんだ、お前も来たのか」


久々の幼馴染全員で集まり、会話が弾む


その後、満は叔父さんと退院手続きを済ませ


館であった出来事を事情聴取された





退院から数日後、いつも通りの学校の帰り道


自転車を引いて歩く満とくだらない話をする


寄り道をしないかと提案され、近場の公園につくと


彼は落ち着いた様子であのさ と口を開いた


「…約束、忘れててごめん」


「小さい時…玩具の指輪あげてさ、今日みたいに


誰もいないこの場所で結婚しようって、誓ったよね」


『満…』


嗚呼 やっと、やっと思い出してくれたんだ


あの日、ふたりだけの約束を


ずっと待ってたんだよ、遅いよ


『そうだよ…満、あの指輪一生つけててねって


あのときずっと言ってたの忘れないんだから』


「…恥ずかしいからそれは忘れろ」


片手で顔を隠す彼に胸が締め付けられる


眺める私に気付くと、腕を引かれぎゅっと抱かれる


自分よりも高く感じる体温 耳に届く心音に落ちつく


「…あの約束、まだ有効だよな」


『え…？』


そうして腰を抱き寄せられ、髪 頬 を指が伝う


逸らせない目線は絡み合って ゆっくり距離が縮まる


「A、月が綺麗だね」


欠けた月が一層美しく好き合う私達の影を重ねうつした





＿ やくそく ／ 神崎 満

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