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＊
とりあえず、喧嘩がどうなったのか。
むしろ本当に、物音の正体は喧嘩だったのか。
自分でもやめた方がいいと思いながらも、
素直な好奇心には勝てずに、ひとつ隣の路地の様子を見に向かった。
＊
そこに居たのは全部で6人だった。
まず、他校の黒い制服を着て、地面に倒れている男が5人。
次に、灰色の長ランに身を包み、何事も無かったかの様に立ち去ろうとする男が、1人。…1人？
どうやら灰色の男がたった1人で
5人もの輩を制したらしいことが分かった。
彼の強さに少し呆然としてしてしまう。
___怪我とかは大丈夫なのだろうか。
そんな月並みなことを考えていた時、無事に見えた男がふらつきながらその場にしゃがみ込んでしまうのが見えた。
「だ、大丈夫ですかっ…？！」
5人を相手にしたのだ。さすがに何かしらのダメージを負ったのだろう。私は無意識に、その男の元へ駆け寄っていた。
男はその場にしゃがんだまま、訝しげに振り向く。
喧嘩のために少し崩れたオールバックや
眼光だけで人を殺せそうな切れ長の目に、
私は少したじろぐ。
というのも、ほとんど勢いで飛び出してきてしまったので、何て言葉を続けようか考えていなかったのだ。
「あ？何だテメェ」
放っておけと言いたげに顔を上げた男の額に、作ったばかりの痛々しい擦り傷が見えた。
やっぱり、怪我してる…。
「えっと、あの、たまたま通りかかって…」
そう言いながら通学カバンを開く。
中からハンカチと絆創膏を取り出し、男に差し出した。
「おでこの傷、痛そうだから…。よかったら使ってください」
「……」
男は少し驚いた顔をした。
そりゃそうよね！
これ以上話すことがない。
「えーっと…」
「……」
だめだ、絶対に変な奴だと思われた…
「…じ、じゃあそういうことで！！では！！」
この沈黙に耐えられず、
私はハンカチと絆創膏を無理やり男に押し付け
次こそ駆け足で家路についた。
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作者名：清 | 作成日時：2018年11月29日 1時
