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この場から早く消えたいのに足が動かなくて。
｢……退院したら、もう会わないようにしよ｣
深｢なんで？｣
｢私目黒くんと結婚したいから｣
あれも、これもどれも全部嘘。
俺と一緒にいる時苦しそうな顔しかしないくせに。
俺と結婚したいとか絶対うそじゃん…
深｢は？｣
｢目黒くんにさ、プロポーズ受けてんの｣
深｢だめ、断れよ｣
｢断んないよ｣
深｢断って｣
｢断んない｣
深｢無理やりキスしたら怒るんだろ？｣
｢怒る｣
深｢っA！！｣
｢………大好きだったよ、たつやくん｣
深澤くん、おれプロポーズなんてしてないよ。
騙されてんの、その人に。
声震わせながらの大好きだったよ、って何。
今でも好きなんでしょ、
嘘つきなA、
どうせ頑張って笑顔でも作ってるんでしょ。
すっごい泣きそうになりながら。
女の子の涙ってずるいよな。
勝てないから。
とくにその人の涙とか嫌って言えない。
深澤くん、今上手に手のひらで転がされてるのに。
…………いや、おれもか。
｢へへ、変な顔｣
深｢A｣
｢泣きそうな顔しないの！……ごめん、ごめんね｣
深｢……謝んなよ｣
｢ごめん｣
深｢……もう、ここには来ないで｣
｢……………うん、ごめんなさい。ありがとうたつやくん｣
足音が聞こえてきて慌てて花束を看護師さんに押し付けてエレベーターに早歩きで乗り込んだ。
なんだよ、全部嘘じゃん。
逆に俺を苦しめてんのに…
両想いならなんで付き合わねえんだよ。
ずっと深澤くんに片想いしてるAといる俺の気持ち考えたことあんの？
それでもいいって思ってたよ。
………いつか、諦める覚悟なんか出来てたのに。
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作者名：たぁゆぅ
| 作成日時：2020年5月23日 15時
